ぼくは今、本屋に並ばない本を書いている。 こういうと、みなさんは、あーあっ、アイツはついに、そこまで落ちぶれたか。本屋に並べられないほどひどいスケベエな物語を書いているのか、と思うかもしれない。 どうぞご安心を。「世界の動物絵本シリーズ」という、極めてまじめな絵本を書いている。しかも、40冊からなる大きな企画であるが、決して本屋には並ぶことのない絵本なのだ。不思議でしょ。 えっ、なぜ? そんな絵本が韓国の書店に並ばないの? それはみなさんが、一番理解できないところだろう。 実は、ぼくも、韓国独特のシステム理解するまでに二年ほどかかった。このブログで、そのことがちゃんと伝わるか心配だけど、勇気をもって話を進めよう。 韓国では大きく分けて「単行本」と「全集」という、ふたつの種類の本が存在する。つまり、本屋さんに並ぶ「単行本」(シリーズでも、こういうからややこしい)と、本屋さんには決して並ばない「全集」(多くの場合、インターネットだけで売られている)があるのだ。 今、ぼくがしているのが、本屋に並ばない「全集」の仕事なのである。 日本ではもうなくなってしまったけれど、むかしは「家庭用の児童書セット」って、売っていて、みなさんの家にもあったはず。そう。それが、韓国でいう「全集」なのである。 最初はこのシステムに戸惑った。世界的な名作の韓国版を手に入れたかった。しかし出版されているのに本屋では売っていない。何が何だかわからなかった。 簡単なことだ。「全集」の目玉にしてしまうから、それが欲しければ「全集」を買わなくてはいけない。と、いうシステムなのである。 確か?「はらぺこあおむし」も「全集」のひとつだったが、猛抗議を受けて「単行本化」されたと聞いたことがある。 とにかく、韓国では、「全集」を専門に出す出版社が半分。本屋に並ぶ「単行本」を出す出版社が半分。両方している出版社は、一部の大手だけ。しかも、全集出版社は、ブロードバンド普及率世界第二位というネット社会をフル活用して成長し続けている。 ここからの仕事も受けないと、韓国では作家してやってはいけないのも現実なのだ。 しかし、悪いことばかりではない。「単行本」に比べると、べらぼうに安い。しかも、大学の教授や教育のプロが、幼年期から高学年までの子どもが読むのにふさわしい本を選んでくれる。 「全集」を揃えれば子どもに必要な本を兄弟で回し読みできる利点がある。 日本では区にひとつは図書館があるが、韓国では図書館がない地方が、まだ、たくさんある。「全集」は、そんな韓国の事情もあって伸び続けた。この不景気で、ますます伸びるだろう。 今までも、「全集」の仕事を手伝ったことはあるが、今回は話がちがう。動物絵本の生物学的な記述をチェックするアドバイザーだから責任が重い。 ところが、これが、なかなか手間がかかる。選んだものがすでに韓国で出ているケースも多い。40冊を選ぶのはなかなかたいへんだ。 絵本は血眼になって読むものじゃないよね、たのしく読まなくっちゃねぇ。
by kimfang
| 2009-01-28 16:40
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