動物児童文学作家のキム・ファンです!!
09/6/6 ムルチョンセ
 ホント、友人はありがたい。今度はフリーの編集者が絵本の仕事を取ってくれた。
 で、「何を書く?」と聞いてきたので、「カワセミが書きたい」と迷わずに答えた。近所に彼らと出会える場所があるし、いつか彼らの暮らしぶりを絵本にできればと願っていた。
 でも、カワセミを主人公にすることは決まったが、いったい何を主題に描くべきか…。とにかくカワセミの観察からはじめた。

 カワセミは漢字で「翡翠」と書き、「飛ぶ宝石」と呼ばれているたいへん美しい鳥だ。しかしスズメより一回り大きいくらいの小さな体(約17㎝)に似合わぬ、どう猛なハンターでもある。
 水面を眺め、魚が通るや真っ逆さまにダイブ。体の4分の1もある大きなくちばしで魚を捕らえると、羽を広げて急ブレーキ。羽ばたいて水からあがると、捕らえた魚を岩や木の枝に打ちつけて殺してから頭から飲み込む。
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 韓国語で「물총새(ムルチョンセ・水銃鳥)」。鉄砲弾のように魚を仕留める鳥だとしてその名がついた。
 英語では「Kingfisher」。古い中国語でも「魚狗」または「魚虎」という。それほど魚を捕るのが印象的な鳥なのだ。
 ならば魚を捕る過程を主題にしては? いやいや、日本には魚を捕る瞬間の撮影に世界で初めて成功した嶋田氏の絵本をはじめ、レベルの高い写真絵本が随分とあり、いくつかは韓国でも翻訳出版されている。ぼくが今さら描く必要もない。

 ←嶋田氏のカワセミ最新作。長年の集大成ともいえるクオリティーの高い絵本。

 そこで注目したのが、子育てだ。カワセミは岸壁や土手の赤土に穴を掘り、巣穴の中で子育てをする。巣穴の中を撮った写真絵本はない。というか、ヒナに負担をかけないよう、あえて撮られてこなかった。それじゃあ、写真じゃなくて絵だからこそ描ける世界を主題にしようと決めた。

 しかし、巣穴の中の様子を詳しく書いた文献は少ない。しかも考えれば考えるほど疑問が湧いてくる。例えば、親鳥は5~7羽のヒナに食べ物をあたえるのだが、暗い巣の中では、どのヒナが食べてどのヒナがまだなのかわからない。親はどうやってすべてのヒナを育てあげるのだろか? などなど。わからないことだらけだった。

 そんな時、国立科学博物館付属自然教育園が、「カワセミの子育て生中継」をしていることを知った。論文を取り寄せると、「食べ物をもらったヒナは後ろにさがり、時計回りに親から給餌を受ける」とあった。何と、不思議な! それでみんな育つんだな! 
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 巣穴から巣立ったヒナたちは天敵に見つからぬよう藪の中で暮らしながら、魚を捕る技を親から学ぶ。やがて親は、若鳥に「真の巣立ち」を促す。
 6月、カワセミの二度目の子育てが続いている。ぼくの観察も ^^

 ←カワセミの写真絵本の中で一番のお薦めは嶋田忠氏の『カワセミ チューさんと青い宝石』(平凡社)。 
  作者の嶋田氏が、チューさん(自分自身)がどのようにしてカワセミと出会い、水中での魚捕りをどのように撮影したか? をはじめ、巣穴の掘り方から巣の中の様子などを子どもたちに語りかけるように書いた秀作だ。(惜しくも絶版)
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by kimfang | 2009-06-06 14:09 | トピックス