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動物児童文学作家のキム・ファンです!!
09/7/4 群盲、ゾウをなでた!
 「群盲、ゾウをなでる」という言葉がある。元々は仏典に出てくる寓話からできた成語だ。

 目の見えぬ人たちにゾウを触らせたところ、キバを触った人は『ゾウは大根のようです』といい、耳を触った人は『ちがう、うちわのようだ』といい、足を触った人は『いやいや、臼のようだ』と、おのおのの狭い意見に固執して譲らず、最後には殴りあいの争いになるという話。
 つまり、「全体を知らずに、自分の知っている一部分だけにこだわること」の喩えである。
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 この「寓話」を逆手に取って、社会にメッセージを送ろうとする韓国の画家、オム・ジョンスンさんから、うれしい便りをいただいた。手紙の一部を紹介したい。
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 ―私は1997年から視覚障害を持つ子どもたちの美術プログラムをやっています。
 「2009 仁川世界都市博覧会」で、視覚障害の子どもたちの美術ワークショップと展示を任され、3月から作業をしているところです。
 
 ワークショップにおいて、「群盲、ゾウをなでる、を創ろう」プロジェクトを企画し、資料を探していたところ、先生の『サクラ(韓国語版)と出会いました。

 本に感動した私は、5月にソウル大公園へ行き、ゾウの担当飼育員と会いました。そして、サクラにも触ることができたのです。本の内容がオーバーラップして、とても胸が熱くなりました。

 この感動を、ぜひ、子どもたちにも! と、お願いしたのですが、危険を伴うということで実現には至りませんでした。その代わり、飼育員さんが盲学校へ来てくださり、サクラのことを話してくださいました。
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 私たちのプロジェクトは、「群盲、ゾウをなでる」という言葉に込められた社会的な偏見を、子どもたちとイラストレーターの創意と芸術性で解きほぐすというものです。
 
 そしてその作業の出発は、やはり、視覚障害者が実際にゾウをなでることなのです。

 韓国で、ゾウに直接触れられる施設はたったふたつ。済州島の「ゾウランド」と光州動物園の「体験場」だけでした。

 3か月間のいろんな挑戦と挫折の末、ついに、6月25日、光州動物園にて、30名の視覚障害の子どもたちが、ゾウをなでて、エサをあげて、背中にも乗ったのです!
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 子どもたちは驚きながらも楽しい体験をしました。その体験を元に、子どもたちとイラストレーターたちが力を合わせて、いろんなコンセプトでゾウを創ります。
 それが9月5日に、仁川・芸術会館に展示されるのです―

 まさか『サクラ』が、こんな素敵な挑戦のきっかけになろうとは。

 ノンフィクション児童文学には、『ハリー・ポッター』のような「魔法の力」はないが、挑戦する人を「応援する力」があるようだ。

 さて、子どもたちはどんなゾウを創りだすのだろうか。完成が楽しみだ。

オム。ジョンスンさんは韓国初のユニバーサルデザイン絵本(視覚障害者と健常者が一緒に楽しめる絵本)『점이 모여 모여』を出している。
 「サクラ」と同じ出版社なのに知らなかった^^
 日本の点字絵本の情報を伝えることで、お手伝いしたいと考えている。

by kimfang | 2009-07-04 13:52 | トピックス