カワセミの原稿は無事、契約となった。ありがたいことに、友人(代理人)から「次も書いてほしい」という依頼があり、「赤とんぼはどう?」と打診したら「いい素材ね」となった。
「赤とんぼ」―日本に住むぼくは、当然、「秋に金色の稲穂の上を舞うアキアカネ-고추좀잠자리をイメージしていた。 ところが、編集を担当する友人は、「真夏の池のほとりのショウジョウトンボ-고추잠자리」(写真)をイメージしていたのである。 そう。日韓で「赤とんぼ」はちがったのだ。 そもそも「赤とんぼ」という種類のトンボはいない。体が赤くなるトンボをひとまとめに「赤とんぼ」といってしまっているが、アキアカネ、ナツアカネ、ノシメトンボ、ミヤマアカネなどなど、たくさんいるのに「本当の名前」を知らない人がほとんどだ。 韓国では、体が赤いトンボを何でも「唐辛子とんぼ-고추잠자리」といってしまう。日本で、体が赤いトンボをみな「赤とんぼ」というのと同じだ。「いわゆる赤とんぼ」というつもりで「고추잠자리」といってしまったぼくが一番悪いのだが、友人はガンとして譲らなかった。 このトンボ、未成熟の頃は薄黄色の体だが、やがて(オスのみ)頭はもちろん、体全体が真っ赤になる美しいトンボだ。青トウガラシが熟すと真っ赤になる様子から「고추(唐辛子)잠자리(トンボ)」という名がついた。 名前も姿も、いかにも韓国らしいトンボで、一番、その名を知られたトンボだ。それを絵本にしたいという友人の気持ちはわからない訳でもない。 因みに日本名の「ショウジョウ」は、映画『もののけ姫』にも登場した真っ赤なサル―「猩猩」からきている。 アキアカネか? ショウジョウトンボか? 「唐辛子とんぼ」を譲らなかった友人を翻意させたのは、アキアカネの「人生」だった。 アキアカネは春に田んぼで生まれると初夏に羽化。暑さを嫌って高い山へいく。そして稲穂が黄金に稔る頃に帰ってくるのだ。つまり、「旅するトンボ」なのである。 友人はそのことをまったく知らなかったようで、「旅するなんて、とてもドラマチックね。絵本にいいかも」と心が動きだした。 決定打は「『健康な田んぼ』が減っている。アキアカネを通じて田んぼを考えさせよう」のひと言。 むかしむかしアキアカネたちは、人が田んぼを営みはじめると、それをよく研究し、田んぼに合わせた生活を営んできた。つまり、田んぼがないと生きられないトンボなのだ。 先月、近所の田んぼから羽化したアキアカネは山へと旅立っていった。 友人の心が変わらぬうちに、書きあげなくては ^^ (トンボを撮っていたら、あんなに探していたカワセミが…必死で追いかけているときは、あんまり出てきてくれなかったのに・・・そんなもんです。人生なんて ^^)
by kimfang
| 2009-07-26 12:24
| 取材ノート
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