束草(속초 ソクチョ)にいった。
東海岸の一番北に位置するここは国立公園の雪嶽山があり、海水浴場がありと、レジャーのメッカとしてにぎわう街だ。だから「冬ソナ」などのドラマにも度々登場する。 しかしぼくの目的は山でも海でもロケ地でもなく、イカ。 イカの絵本を書くために、ソウルから約200キロの道のりをはるばるやってきたのだ。 イカなら「日本海」に取材にいけば済む話だが、韓国でだす以上、「東海」を取材するのがあちらの流儀。そう。東海といえばイカ、イカといえば束草、これが韓国の常識なのである。 実は今回、留学生と共に旅をした。ぼくが旅費をだす代わりに彼が宿を提供する。彼のお姉さんはソウルで私設幼稚園経営していて、そちらで泊めていただいた。夜に到着するとあいさつもほどほどに、すぐに酒宴となった。 「明日は高速バスなので…」と遠慮していると、「先生、喜んでください。友達が車をだしてくれることになりました」と留学生。これでトイレのことを考えてビールを我慢することもない。みんなで朝の3時まで飲んだ。 二日酔いでも気合いで出発。待ち合わせの場所に着くと、留学生の親友が待っていた。 その傍らに、な、なんと、ベンツ! 何でも、会社の社長さんに事情を説明すると快く貸してくださったとか。(日本では、絶対にありえねぇ) 高速バスとベンツでは天と地の差。3時間の快適なドライブを満喫した。 漁港は、思っていたよりも小さかった。しかし、閑散期なのに結構人がいて、狭い路地の両側に鮮魚や干物を売る商売人がしきりに声をかけていた。 さぁ、どこにしようか? 束草にきたからにぁ、必ずしなくてはいけない流儀がある。ずばりイカを食うこと。 店に入って注文すると、しばらくたって皿にテンコ盛りに盛られたイカ刺しがきた。 チョジャン(酢味噌)だけでなく、わさび醤油もある。昨今は日本食がブームになっていて、刺身をわさび醤油で食べることも普通になってきた。 さて、そのお味は? 大のイカ好きのぼくが、「忘れられない味一番」にあげてもいいほど、とっても甘いイカだった。 なのに、どうして? やっぱ、若者たちはそれをチョジャンで食べる。 「うーん、チョジャンの味が強すぎて、イカの味がわからなくならないか?」「それもそうですね」 若者二人はおじさんの言葉に一度は納得したが、「やっぱ、イカはチョジャンですよ」とその後はチョジャンで食べだした。まぁ、あちらの流儀にも配慮しなくちゃねぇ。ぼくも半分はチョジャンで食べた。 帰り道、交通の難所として超有名な「寒溪嶺」(한계령 海抜1,004m)はたいへんな霧となった。3m先が見えない状態だ。ライトを上げると乱反射して見えないから、センターラインだけを頼りにのろのろと1時間も走った。 果たして生きて帰れるのか? そんな想いが頭をよぎったが、どんな時も不安を口にしないのも、あちらの流儀。 ケンチャネー!!!(大丈夫!!!) 何とか寒溪嶺の頂上にある休憩所にたどり着くも、霧は一向に晴れない。そればかりか、休憩所もシャッターが閉められてしまう始末。こんな景色が見られるはずだつたのに・・・もう戻れない。いくしかない。 ところが、下りに入るとすぐに霧はなくなったのである! ホント不思議だった! イカの甘みと、怖ろしい寒溪嶺の霧は一生忘れることはないだろう。 束草には、民族の霊峰・白頭山(北朝鮮)へ向かう国際ターミナルがあった。白頭山へ向かうにはロシアへ入り、中国を経なくてはいけない。 「東海」には、「日本海」にない「分断の現実」があった。
by kimfang
| 2009-12-17 21:38
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