今日の韓国は著しい発展を遂げた。しかし1960年代には、世界の最貧国だった時代があったなんて、信じられないことだろう。
その時代に、校長先生が学生たちを動員してシマリスを捕まえ、輸出中間業者に渡して得たお金で校内の備品をそろえたという辛い話も取材を通じて知った。 ようやく輸出が禁止されて、やっと韓国のシマリスも幸せに暮らせる日がきたと思っていたが、取材をすればするほど、彼らを取り巻く環境が益々悪くなっていることを思い知らされた。 例えば、ソウルから簡単にいける山として人気のある、북한산(北漢山)と관악산(冠岳山)には、秋になると次のような大きな横断幕が掲げられる。 シマリスにドングリとクリを返してあげて! ・クリ、ドングリは野生動物のエサです ・人間の欲のせいで野生動物が減っています ・無断採取が見つかったときは、5万ウォンの罰金が科せられます 韓国にはドングリの粉で作る「묵 ムク」という伝統料理があり、そのために登山客が大量に持ち帰ってしまうのだ。 これでは彼らは冬が越せない。 また、山のゴミを目当てに野良ネコが集まり、シマリスを襲っている。 (右下の写真は、관악산 冠岳山の登山口にいた野良ネコ) それだけではない。まるでどこかで見てきたのとまったく同じ光景が今、韓国で広がっているのである。 そう。日本のようにペットブームが起こり、シマリスを飼う人が急増しているのだ。そして、中国から輸入される外来種のシマリスの問題が、今まさに起ころうとしているのである。 ペットショップは、「許可を得て国内産を繁殖させて売っている」というが、密猟や、中国から蜜輸入されたシマリスが出回っているようだ。 およそ100年前、日本には北海道に棲むエゾシマリスしかいなかったが、外国からペット用シマリスを長年に渡って輸入したことから、チョウセンシマリスもチュゴクシマリスも野生化し、北海道以外にもシマリスが棲むようになってしまった。 エゾシマリスを守るためにも、競合と交雑のおそれのある外来シマリスの輸入を、今すぐ禁止すべきだとぼくは思うのだが、日本政府の考えは違うようだ。 2005年から施行された「外来生物法」では、他のリス類が輸入禁止となったのに対して、シマリスは対象外とされた。シマリスは問題になるほど定着していない。大丈夫という考えのようだ。 しかし韓国は、日本のように悠長にしていられない事情がある。 全国、どこにでもふつうにシマリスがいた国だ。北海道だけの問題では済まないのである。もしもチュウゴクシマリスが逃げだしてしまえば、瞬く間に定着し、「遺伝子の錯乱」が起こってしまう。それを心配する人もわずかだ。 だからこそ、警告を発しようと必死にシマリスの本を書いた。 (今、画家さんがイラストを描いている。来春には出るだろう) チョウセンシマリスの輸出が盛んだった1960年代から、韓国の学者や自然保護団体はシマリスの輸出禁止を求めて長く戦ってきた。ようやくそれが実現したのは、30年以上もたってからだ。 長い戦いにならないようにしなくては。
by kimfang
| 2010-11-14 10:55
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