今回の訪韓の大きな目的のひとつが、韓国環境省に勤めるチョン・ソクファンさんへのインタビューだった。
チョンさんはコウノトリの飼育技術を学ぶために一年間豊岡へ留学した経験がある。
何よりも、卵で海を渡って韓国初の人工繁を殖成功させたコウノトリ―チョンチュリの育ての親だ。
チョンチュリにまつわるエピソードを聞こうと訪ねていった。
「韓国では私がご馳走しますから」
チョンさんが連れていってくれたのは「ふぐ料理」。それもプサン式のふぐ料理店。
ぼくをおどろかそうとして、ふぐ料理をチョイスしたようだが。
へへへ。
ぼくはもう何度も、この不思議な「韓国式ふぐ」を食べている。
わさびを醤油皿にいれて待ちかまえるなど、ぼくの手なれた仕草をみて、「ええっ、食べたことあるんですか…」と、チョンさんはガックリしたようだ。
そう。韓国のふぐ料理にわさびは欠かせない。ポン酢も、もみじおろしもないが、何とも、このわさびがふぐに合う。
ふぐの焼き肉にも、ふぐちりにも、このわさびをつける。
ぼくがはじめて韓国式ふぐ料理を食べたのは2005年の1月だった。『コウノトリ』や『シマリス』をだしてくたれ出版社、ウリ教育が、日本に帰るぼくのために送別会をしてくれたときに食べておどろいた。
だって、ふぐちりを、わさび醤油をつけて食べるんだもの!
おかしいのは、韓国の人たちは日本でも「ちり」はこうやって食べると信じていること。
因みに韓国でも「ちり」は「지리 チリ」。
しかしその後、何度か、この不思議なふぐちりを食べるにつれ、ポン酢のふぐちりよりも美味しく感じるようになってしまった。
ぶつ切りの骨付きのふぐを、骨ごとしゃぶる。鍋には野菜がたっぷり。
最後のしめは수제비―すいとん。
これがまた、美味い。
韓国ではふぐ料理は庶民の味。
朝からでも食べる。
ところ変われば、ふぐ料理も変わるのだ。