シンポジウムのあとはそれぞれの市が、それぞれの目的にあった視察にでかけた。
当然、豊岡市はコウノトリ関連の施設。もちろん、ぼくもそのために通訳としてやってきた。
まずはコウノトリを1996年から飼育している韓国教員大学。
宿泊先のプサンから車で2時間半かけて着いた。
ぼくは豊岡の人たちを連れて4回もいっているが、中貝市長ははじめての訪問だ。やはり市長がいくとちがう。教員大学の総長との会談が組まれた。
シンポジウムでは3人でやっていた。ひとりで大丈夫かなあと心配したが、むしろこっちの方がやりやすかった。話題がコウノトリに絞られているし、それに何よりも、総長がきれいな標準語で話してくださったので助かった。
へへへ正直にいうと、プサンでのシンポジウムは、結構、プサン訛りに手を焼いていたのである。
総長室での歓談が終わると、実際にコウノトリがいる飼育施設へと移動した。
韓国コウノトリ復元センターの所長は長年、創設者のパク・シリョン教授が務めていたが、弟子のクォン・ヨンジュ教授が新しい所長になっていておどろいた。世代交代だなあ。
クォン所長から、「豊岡からきたオスと韓国で生まれたメスがペアになって、毎年、ひなを生んでくれています」と説明があった。
市長がケージの前に進むと、何と、豊岡からきたオスが市長にあいさつしに近づいてきた。
「放鳥されたら豊岡にまで飛んできてよ」と市長が声をかけると、
すかさず総長が、「愛する奥さんが気になって、すぐにもどってしまうでしょう」と返し、みんな大爆笑した。
有名な「コウノトリ市長」の訪問とあって、韓国KBSテレビと東亜日報が取材にきていた。