次に訪れたのが忠清北道・イェサン(禮山)郡。
ぼくも、豊岡の人たちも一番たのしみにしていた訪問地だ。だって、ここに豊岡の「コウノトリの郷公園」のような「コウノトリ村」が建設され、コウノトリの野生復帰の拠点となるからだ。 正直にいおう。韓国のコウノトリ村建設計画は、これまでに二転三転してきた。 コウノトリ復元センターでは、教員大学で飼育しているコウノトリを受け入れてくれる自治体をさがしたが、当時、積極的に手をあげてくれる自治体はなかった。 粘り強い説得の末に、2005年、教員大学がある忠清北道のチョンウォン(清原)郡ミウォンに決まった。 農民たちはとても積極的だった。コウノトリを育む農法で米をブランド化するんだと意気込んでいたし、ぼくは彼らの熱意に答えようと豊岡の農夫と訪問したこともある。ところがチョンウォン郡の幹部は、豊岡の訪問団との食事会に銀行マンを伴って現れたのだった。お金のことしか考えてないの…? 大丈夫か…… 心配は現実となった。2007年、新しい郡守に変わるやいなや、計画は白紙撤回された。 何と郡は、コウノトリ村誘致ではなく、ゴルフ場の誘致を決めたのだった。 そこで政府と韓国コウノトリ復元研究センターは、コウノトリ村の誘致を希望する自治体を公募した。そのなかから、2010年に選ばれたのが、今回訪問した忠清南道のイェサン郡だった。 韓国にはコウノトリが生息していたことを伝える石碑が三つある。ひとつは最後までコウノトリがいたウムソン。そしてイェサンにはふたつある。文化的にも、合格地だ。 しかしぼくが知っている情報によれば、全羅南道のヘナム(海南)市は、政府が公募するずいぶん前から、とても積極的に誘致に手をあげていた。市民のラブコールは、ヘナムが一番。だってヘナムには、野生のコウノトリもしばしば現れる。そんなことから、ぼくもヘナム市が適切と考えていた。 が…政府とセンターが出した決定は、イェサン郡。すっきりしないものが残っていた。 また、チャンウォン郡のように挫折しなければいいが……。 イェサン郡の郡守さんとは、どんな方なのか? まさかまた、銀行マンを連れてこまい…。 いざ、豊岡市長との会談がはじまった。まず、おどろかされたことは、自分の発言を簡単にまとめたものを準備してくださったこと。これは通訳としては、たいへん助かることだ。 次、どんな発言が来るのか、全神経を集中しメモをとりながらやると余裕がなくて、つらい。しかも、やり直しはきかない。 けれども、こうして紙に書いていただくと、余裕をもって訳すことができるから、限りなく正確だ。もちろん、郡守さんは紙に書いていることを棒読みしたのではなく、アドリブをたくさん交えて朗らかに話された。 つまり、豊岡の市長さんを迎えるにあたって、事前に歓迎文を作成するほど、この会談に並々なならぬ想いを寄せていらしたということだ。 会談のなかでも熱意を感じた。豊岡のこと、コウノトリのことをわかりやすく知るための一時間のビデオを作成させて、全職員に見せたという。 また、百聞は一見にしかず。豊岡に見に行け! と職員をどんどん訪問させていた。 そういえば、このごろイェサンの人たちの豊岡訪問が相次いでいた。 熱意は、食事に向かう過程でも現れた。 移動のために車に乗ったのだが、郡守さんは準備された公用車には乗らずに、ぼくたちのマイクロバスに単身乗り込み、食事場所への移動時間も惜しんで豊岡市長と話をされたのだ! そして食事会場でも、また、発言内容を要約したメモをそっとわからぬように渡してくださった。 まこと、紳士である! 郡守さんは、コウノトリをイェサンが独占しようなどとは考えていないとおっしゃった。ここで育てたコウノトリが韓国全土に飛んで行ってほしいと考えていた。 その基礎を、しっかりとイェサンがやるんだと! ヘナム市はもともと越冬地だから韓国全土に広がらない可能性がある。イェサンとヘナムを移動しながら全国へ広げればいいともおっしゃっていた。 この、郡守さんなら大丈夫! と、確信した。 郡守さんとの会談のあと、コウノトリ村建設予定地に立った。 見下ろす谷が、コウノトリ復活の拠点となる! 放鳥式典には、中貝豊岡市長が招待されるだろう! ついでにぼくも呼んでや~ 豊岡市長のイェサン訪問は、大きく報じられた。 地元新聞 忠清トゥデイ Cニュース041
by kimfang
| 2012-05-09 14:30
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