韓国から友人がやってきた。日本には10回以上もきているが、京都は初めてという。どのお寺に連れて行こうかと悩んでいたら、お寺よりも本屋に案内してほしいといってきた。
わかった。京都の大型書店なら、あそことあそこを巡ってとプランを立てていると、一乗寺の「けいぶん社」に連れていってくれればそれでいいという。何でも、いつか児童書専門店を経営したいという夢があるらしく、参考にしたいというのだ。※けいぶん社児童書専門店ではない。 日本と同様、韓国の出版不況も深刻だ。図書館司書を長くやってきた友人なら、そのへんの事情は誰よりも知っているはずなに…。大丈夫なのかな?と心配になった。 韓国では、1994年に5683店あった本屋さんが、2011年には1752店に激減した。13年間で実に70%も消えたわけだ。 原因は、インターネット書店による過酷な値引き競争。日本は「再販売価格維持制度(再販制度)」を堅持しているので、本の値引きはないが、韓国では実質、無制限な値引きができる。だから資金がある大手が有利。中・小規模のライバルがいなくなると、今度は大手同士の不毛の戦い。 そのため、売れる本しか作られず、しかも大手インターネット書店が安く売るために、教養書を作っている出版社や中・小規模の本屋さんがやっていけなくなってしまった。 危惧した政府は、2003年に「図書の定価制度」を実施した。しかしネット書店からの強い反発があり、みっつの妥協案をだした。 ①新刊は18か月間は、保護される。 ②新刊でも10%以内なら値引きが可能で、マイレージなどの追加分の値引きも10%認める。 ただし、総19%を超えてはいけない。 ③実用書と子どもの参考書は保護対象外。自由に値引きしていい。 つまり、新刊でも最大19%の値引きが法的に可能で、18か月を超えて旧刊扱いになると無制限に値引きできるというものだ。 ところが現実は、保護対象である新刊さえも実用書というジャンルに入れて値引きされていたりして、政府がいう「定価」にはほど遠いものになってしまっているのだ。 割引される売れ筋の旧刊だけが活発に動き、新刊がなかなかだせない。多様な本が出ないばかりか、全体的な部数もかなり減っている。 さて、こんな「出版砂漠」の韓国で、本屋をしたいという友人だが、昨年から先月にかけて、「出版社と本屋を救うための法改正」が国会で議論されたという。値引きは、マイレージなどを含めても10%まで。定価に近い価格を維持すると法案が通る見通しというのだ。 ぼくは科学読み物やノンフィクションといった地味なジャンルの書き手だ。 今回の改正を歓迎しているが、果たして、ちゃんと施行されるのやら……。
by kimfang
| 2013-02-03 12:49
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