動物児童文学作家のキム・ファンです!!
13/9/8 国境のない村
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 実は、公開研に合わせて、アジア児童文学日本センター主催の「多分化社会の構築へ向けて―コリア児童文学の現在を中心に―」というシンポジウムがあった。
 韓国の児童文学を日本に紹介したパイオニアであられる仲村 修先生と、在日作家の先輩である李慶子さんとともに、パネラーとしてお話させてもらった。
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多分社会を目指す韓国の児童書―『까매서 안 더워? 黒いから暑くない?』を中心に―という題でお話させていただいた。以下に内容の骨子を紹介したい。

 ぼくは、動物の話を書くのが専門で、このようなテーマの本はあまり読んでこなかった。そこで7月に訪韓したときに、韓国で毎年開催されている「平和の本巡回展」の選考委員を務める友人に、多文化社会というテーマならどのような本が支持されているのか取材をした。みなが口をそろえて名前を挙げたのが、パク・チェランが書いた『黒いから暑くない?』だった。

 本は、3つの物語のオムニバスだ。
 韓国人として認められようと、毎日、韓国サッカー応援団の赤いTシャツを着てくるティナ。そのTシャツの国旗に敬礼してからかうクラスメイト。
 不法滞在がばれたのは自分がモンゴル語を話したせいだと、母親の強制送還をきっかけに言葉を話せなくなってしまったソンワン。
 自分が考えた眠れる森の美女のパロディ劇だから、やっぱり王様の役をしたいと思いながらも、自分の肌が黒いからと諦めたトンギュに、練習中友人がいった「お前は黒いから暑くないだろ!」――。

 『黒いから暑くない?』は韓国人と結婚して生まれたダブルの子どもたちと、韓国へ働きにきた外国人労働者の子どもたちの現実を鋭く描いている。

 多文化社会―。これは日本ではまだあまり耳慣れない言葉だが、韓国では若者からお年寄りまで誰もが頻繁に口にする。それは急速な少子高齢化を受けて、政府が外国人に積極的に門戸を開く政策を進めたことで、外国人が飛躍的に増えたからだ。

 日本の外国人数は、リーマンショックと東日本大震災の影響で減ってきているが、韓国はどんどん増え続けていて、外国人の人口比でも、国際結婚率でも、日本の約2倍となっている。今のところは移民を受け入れて永住させるのではなく、短期の単純労働の確保という段階だが、いずれ移民受け入れに動くことも予想される。

 ところが問題も多い。例えば「産業災害補償保険」は、雇い主である企業が必ず加入させなくてはいけない保険だ。しかしその存在を外国人には伝えないで、事故が原因で働けなくなった外国人労働者を一方的に帰国させながら、保険金は自分たちが不法にもらっていたという許せない事例もある。
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 韓国で外国人労働者とその家族が一番多く住む町として有名なのが、京畿道・安山(アンサン)市の元谷洞(ウォンゴクトン)。最新の調査では、6万5千人にも及び、何と住民の約70%が外国人だ。

 苦労している外国人を救えないか。教会が元谷洞に「移住民センター」を設立し、「国境のない村運動」を展開したことで、いつしかここは「国境のない村」と呼ばれるようになった。外国人同士の理解を深めるための祭りも行われている。
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 国境のない村を一躍有名にしたのが、冒頭のパクだ。彼女はこの村に一年以上通って、見て聞いたことを本にした。さらに読者からの強い要望を受け、子ども向けに『黒いから暑くない?』をだしたのだ。
2009年、「国境のない村」は政府から「多文化特区」(写真)に指定された。

 知らない人も多いと思うが、1960年代の韓国は世界最貧国のひとつだった。他国からお金を貸してもらうために多くの人が海外へ働きにいった。有名なのが西ドイツ。女性は看護師として、男性は炭鉱夫として渡った。今も、ドイツに韓国人が多いのはそんな歴史があるからだ。中東に出稼ぎにいった人たちもことも忘れてはいけないだろう。

 外国人労働者に対して差別もするが、自分たちも海外に働きにでた経験があり、問題はたくさんあっても何とかともに暮らそうという努力が続いている。
 日本にも外国人労働者がたくさんいて、ようような問題が起きているのにそれを描いた児童書はほとんどない。
 日本も少子化は深刻な問題だ。今後は外国人に門戸を開く政策も現実味を帯びることだろう。韓国の多文化社会を描いた児童書を紹介する必要もあるのでは。
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by kimfang | 2013-09-08 14:26 | トピックス