8月末の事だった。韓国の友人で著名な翻訳家である、オム・ヘスクさんを通じて、韓国、最大手の出版社であるウンジンから、「本にしたい、原稿はありませんか?」と、メールがきた。
えっ? あの、ウンジンから……! いつかはウンジンでだせる作家になるぞと、目標にしていたあこがれの出版社だ。 「原稿はないけど、頭にはある。企画書にまとめるには時間がかかるので、10日ほど待ってほしい」と返信した。 まったくのウソである。 本当はとっておきの原稿も他社に送ってしまったばかりで手元にはなく、頭のなかも空っぽだった。 オー、よりによってこんなビックチャンスに、何もないなんて……。 許された時間はたったの10日。 本棚にずらりと並んだ「ネタ帳」(基本、一冊の本を書くときに一冊のノートに構成や内容を書き込む)をひとつひとつ丹念に見たが、ウンジンに提案できそうなものはなかった。 どうしょうか……。 一日、また一日と時間は過ぎていく。 人が開き直るとは、まさにこういうときに使う言葉なのだろう。 日本でも韓国でも「動物専門作家」として知られているのだが、心機一転、「植物」、それも「野菜」に活路を求めたのだ。 実は数日前、韓国KBSのお昼のニュースの中で、「我が国は世界で一番野菜を食べる」というアナウンサーの言葉があり、メモっていた紙切れがテーブルにあった。「我が国は世界で一番野菜を食べる」―この一言にかけてみようと決めたのだ。 確かに、韓国の人は野菜をたっぷり食べる。日本では、毎日、焼肉ばかり食べているイメージがあるが、本当におどろくほどたくさん食べるのだ。 調べてみると、統計でもそれが裏付けられている。図は国連食糧農業機関(FAO)の2007年のものだ。今は中国に抜かれてしまったが、過去には世界一の年もあった。 それなのに、韓国に野菜の絵本は少なく、あっても海外の翻訳本が多い。 一番支持されている『채소가 최고야』(천개의 바람)も、日本の『おやおや、おやさい』(福音館)の翻訳本だ。この本を訳したのが、他でもない冒頭のオム・ヘスクさんだったのである。 しかし海外の本は、どうしても国内の野菜とはちょっと形や色がちがう野菜が登場する。できれば国産が望ましい。特に、知識の本は。 ぼくは科学読み物が得意だし、ウンジンも知識の絵本を欲しているというので、「野菜の知識絵本」に絞り込んだ。 そして最後の三日間は、ほとんど寝ずに企画書を書き上げて送った。 そしてひと月ほどたった10月、無事に企画が通ったとの報せを受けた。やった! 契約と初ミーティグのために韓国にいってきた。
by kimfang
| 2013-12-11 14:04
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