動物児童文学作家のキム・ファンです!!
14/5/24 200年前の本に新たな命を吹き込んだ『玆山魚譜を訪ねて』
f0004331_9425837.jpg 
 5年前のことだ。イカのことをあちこち巡って取材した。韓国人はイカがとっても大好き。実はぼくもイカにはめっぽう目がない。じゃあ、イカの知識絵本を書けば当たるぞ! と、イカのメッカ、東海岸の北側の町、ソクチョ(束草 속초)へもいった。
 ここでとれるイカは、ほとんどがスルメイカ。スルメイカはトンヘ(東海 / 日本海)を回遊する。その過程を描いた絵本を書きあげたのだが……。
 残念、結局、だしてくれる出版社は見つからなかった^^
f0004331_9433338.jpg
 でも、そのとき、生態学的な知識だけでなく、イカと暮らした民俗も反映させねばと一生懸命に調べた。知識を得るのに大いに役立ったのが、当時(もう少しブームは過ぎていたが)ベストセラーとなっていた『玆山魚譜を訪ねて』だ。今振り返っても、勉強のあとがしっかりと残っている。
原書名『현산어보를 찾아서』이태원 / 청어람미디어

 そもそも「玆山魚譜 자산어보」は何だろうか?
 朝鮮後期の学者である丁若銓(チョン・ヤクチョン 전약전)が1814年に島流しになった全羅南道の孤島、黒山島(フッサンド 흑산도)で書き記した韓国初の魚類誌だ。
 155種の海の生きものについて生き生きとした描写をしている。
 丁若銓と若鏞(ヤギョン)の兄弟は、カトリック教徒への弾圧で流刑となった。若鏞は、結構ドラマにも登場するので知っている人は多いことだろう。
f0004331_945540.jpg
 200年前に丁若銓が漢字で書いた「玆山魚譜」が、庶民に広くハングルで読めるようになったのは1974年のことだった。
 そのとき2歳だった男の子が、この歴史的な本に新たな命を吹き込む。『玆山魚譜を訪ねて』は、1972年生まれの若き現職生物教師(ソウル大学卒)であるイ・テウォンが、「玆山魚譜」を現代風に読み解きながら、読者が生きものや科学史などの文化に親しめるよう工夫してつづった秀作だ。
f0004331_9554956.jpg
 折しもこの本がでたころ(2002年12月)は韓国で釣りブームが巻き起こっていたころで、全5巻の大作にもかかわらずベストセラーになった。

 ところで、ハングルを読める方は、もうお気づきだと思うが、丁若銓が書いたのは「자산어보」と呼ばれているのに、イ・テウォンの本のタイトルは「현산어보」になっている。

 イ・テウォンは各巻の冒頭に、おおよそ次のように語っている。
「…丁若銓は、黒山という名は暗くて物悲しい。だから家族に手紙を書くときも黒を意味するほかの字をあてて『玆山』と書いた。もしそうならば、「玆」は「자」ではなくて「현」と読むのが、より正しいという主張がある。自分もそれを支持したくて本のタイトルをわざと현산어보とした」

 この秀作は、日本でも翻訳出版されている(ぼくの知る限り2巻のみ)。
[PR]

by kimfang | 2014-05-24 09:46 | トピックス