かなり前のことだ。韓国KBSのニュースを見ていたらアナウンサーが、黄金に実った稲穂の上を群れ飛ぶ「アキアカネ」のことを「ショウジョウトンボ」と呼んでいたのであわててテレビ画面に向かって突っ込んだ。
「おいおい、そのトンボは『고추잠자리』(ショウジョウトンボ)というのではなく、『고추좀잠자리』(アキアカネ)というんだぞ!」 案の定、同世代のフリーランス編集者とのやり取りでも、秋に群れ飛ぶ赤トンボの代表である「アキアカネ」のことを「ショジョウトンボ」といっていた。 韓国では秋に飛ぶ赤いトンボをみな、「고추잠자리」(直訳するとトウガラシトンボ。ショウジョウトンボの意味)と呼んでしまっている。 夏の湿地で見られるオスが全身真っ赤(頭から腹の先まで、あしも)になるのがショウジョウトンボ。このトンボはそんなに群れないし、ましてや簡単に見られるトンホじゃないのに、だ。 もしかすると、チョ・ヨンピルの名曲「고추잠자리」(ショウジョウトンボ)も、歌詞に秋がでてくるので「고추좀잠자리」(アキアカネ)と思って書かれたものかもしれないなぁ^^ このように韓国では、多くの人がアキアカネとショジョウトンボを取り違えているのである。もっと、アキアカネのことを知ってと願って書いたのが、ほかでもない絵本『고추좀잠자리가 높이높이』비룡소 (アキアカネが 高く高く / ピリョンソ)だったのだ。 先週から今週にかけて、この絵本の最終確認のために忙殺されていたが、昨日、ついにOKをだした。18日に印刷、今月末に出版されることになった。 もしも本当にこの絵本も8月にでたならば、ひと月に3冊も出すという、ありえないことが起こることになる。 さて、以前にもここで書いたが、この絵本はいろんなことがあって5年もかかってしまった。、しかし結果的には、今ではむしろその方がよかったのではないかと思っている。 なぜならこの絵本の原稿を書いていた頃は、韓国のネットを調べてもトンボについて書かれた記事はほとんどなく、編集者や画家さんに作品世界を理解してもらうのにも手間がかかったほどだ。 トンボについて書かれた専門的な書籍もなく、唯一あったのが『한국의 잠자리 생태도감』(韓国のトンボ生態図鑑)2007のみだった。一冊、5,000円ほどもする本だが、画家さんにはぜひ、買ってほしいとお願いしたことを今でもしっかりと覚えている。 ところが5年がたった今では、トンボの写真を紹介する人たちが大勢いて、冒頭で話したような「고추좀잠자리」(アキアカネ)を「고추잠자리」(ショウジョウトンボ)と呼んでしまっている間違いを指摘する記事も多い。 前出の『한국의 잠자리 생태도감』(韓国のトンボ生態図鑑)だって、韓国最大のインターネット検索サービスであるネイバーで、トンボの種類を検索すると、誰でも無料で読めるようになった。(うーん…5,000円の本買って損したかぁ…画家さんに悪いことしたかも…^^) つまり、急速にトンボの知識が大衆に広まりだしたということだ。絵本をだす好機かもしれない。 5年待ったことは悪いことではなかったのである。 絵本のあとがきに次のように書いた。 おじいさん、おばあさんたちは、遠いむかしから田んぼでコメを作ってきました。アキアカネたちは田んぼで、コメ作りの流れに合わせて暮らしてきました。ところが最近、アキアカネが減ってきているといいます。田んぼが減り、田んぼに農薬や化学肥料が多く使用されて、トンボたちのえさが減っているからです。田んぼは、多くの生きものたちを育む湿地でもあるのです。田んぼがまた、健康な湿地に戻って、そこでアキアカネをはじめとする多くの命が暮らすことを願っています。
by kimfang
| 2014-08-13 15:52
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