京都家庭文庫地域文庫連絡会の会報誌「京庫連だより」に寄稿しました。
きせきの海をうめたてないで!守ろう キム・ファン
わたしが「上関原発計画」に関心を持ったのは、2002年に「上関の自然を守る会」(当時は、長島の自然を守る会)からスナメリ(世界一小さなクジラのひとつ)の絵本の執筆依頼を受けてからでした。スナメリのことを調べていくうちに、瀬戸内海にはかつて、人とクジラが力を合わせて漁をした「スナメリ網代漁」とう伝統漁があったことを知るとこになり、この素晴らしい文化を子どもたちに伝えたいと強く思ったのでした。
いい絵本を書くには、現地にいってしっかりと取材をしなくてはいけません。網代漁が実際に行われていた広島県竹原市の海域に船でいってみました。そこにはスナメリを神さまとして祀った小さな祠があり、漁師さんたちがスナメリに深く感謝していたことを肌で感じることができました。しかし2度も訪れたというのに、スナメリはおろか、漁船の姿すらありませんでした。この海が見渡せる場所に、「スナメリ回遊海面」が天然記念物に指定(昭和5年)されているとこを知らせる碑が寂しそうに立っていました。
片や原発建設が予定されている山口県上関町の海に船ででてみると、海は命であふれていました。
よその海では会うのが難しいスナメリやカンムリウミスズメがいて、漁船や釣り人を乗せた船でたいそうにぎわっていました。天然記念物に指定して守らなくてはいけないのはこちらの海なのに、どうしてここをたった数十年しか使えない原発のために埋め立てなければいけないのか、怒りがこみあげてきて悲しくなりました。
原発からでる温排水は海の生態系を壊してしまいます。原発建設によって生きていけなくなる生きものたちの、切なる訴えをつづりました。かれらの声なき声を聞いてください。