韓国絵本紹介コラム24回目です。
サプサル犬 大活躍 韓国には、韓国ではじめて国際公認犬と認められた全羅南道珍島の珍島犬(チンドッケ)、尾っぽがなかったり極端に短かいのが特徴の慶尚北道慶州の慶州犬(キョンジュゲ)、毛が長くてふさふさしている慶尚北道慶山のサプサル犬(親しみをこめて「サプサリ」とも呼ばれている)という韓国原産のイヌがいる。 今回はサプサル犬が主人公の絵本、『くらやみのくにからきたサプサリ』(原書 까막나라에서 온 삽사리)を紹介しよう。 サプサル犬の「サプ」とは追い払うという意味。「サル」は悪鬼のたたりを指す言葉。つまり、「悪鬼を追い払うイヌ」。 新羅の王室で大切に育てられ、名将キム・ユシン将軍が軍犬として戦場に連れていたという伝説も伝わっている。 高麗の時代になると一般の人たちも飼いだし、朝鮮朝時代後期には新年に厄払いとしてサプサル犬が描かれた絵を家の門に貼るのが流行したという。 危機が訪れるのは日本統治時代、アジア・太平洋戦争末期。このとき、日本の飼い犬たちは絶望のなかにいた。 「イヌも、お国の役に立ちます。供出しましょう」 そうやって集められたイヌのなかで、勇猛なものは戦闘用に訓練されて戦地に赴いたが、多くのイヌたちはすぐに殺され、その毛皮は軍服や軍靴となって戦地に送られたのだ。 日本国内のイヌでさえもこのようなありさまだから、植民地だった韓国のイヌたちの受難は想像にあまるものがあった。とりわけむごい仕打ちを受けたのが、ほかでもない、軍服や軍靴を作るのに最適な毛を持っていた、サプサル犬だったのだ。 「サプサリは、きっとどこかで生き残っている!」 1969年、慶北大学の若い獣医師ふたりは、全国を歩き回って30頭のサプサル犬を探しだす。けれどもその価値は認められず、一時は8頭にまでに減り、まさに絶滅寸前だった。 その後、アメリカから帰国したハ・ジホン教授たちの努力により復活。ようやく92年に、天然記念物に指定されたのだ。 さて、絵本の内容だ。韓国には「暗やみの国の火の犬」という、むかし話がある。暗やみの国の王さまは、太陽がうらやましくてならない。そこで火の犬に命じて太陽を取りにいかせるが、思うようにいかない。それでも犬たちはあきらめることなく、宇宙を駆けまわる。太陽が無理なら月でも盗もうと、果敢にかじりつく。日食や月食が起こるのは、火の犬たちのしわざだという話だ。 絵本は、このむかし話にもとづいて作られた。むかし話では火の犬の犬種は特定されていないが、作者はサプサル犬とした。また、むかし話にはでこない、玄武、清龍、白虎、朱雀の四神も登場させた。 むかし話は、スケールの大きな新しい物語となって現代に甦ったのである。 記事全文はここから読めます。 韓国の絵本が本格的に日本で紹介される前だった2000年、日本を代表する児童文学作家の故松谷みよ子氏は、同じむかし話を題材にした絵本『火をぬすむ犬』太平出版社をだしている。 ぼくはこのむかし話をこの絵本で知ったが、サプサル犬については、2003年の読売新聞で知った。すぐにでもこのイヌに会いたかったが、ようやく2006年に「慶山サプサル犬牧場」を訪れることができた。 あいにく、ハ教授にはインタビューできなかったが、教授の指導を受けている若い研究者からいろいろな話を聞くことができた。 サプサル犬の訓練も見せてもらうことができた。 そのかいあって、『人間の古くからの友だち、イヌ』(2013年)をだすことができた。 もちろん、この本にはサプサル犬のことを詳しく書いている。 記事全文はここから読めます。
by kimfang
| 2015-08-28 17:42
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