動物児童文学作家のキム・ファンです!!
15/10/16 めぐりめぐる命のつながり
韓国絵本紹介コラム28回目です。
めぐりめぐる命のつながり    
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 あれほど群れ飛んでいた赤とんぼも、すっかりいなくなった。どこかにいってしまったのではない。命をまっとうしたのだ。
 いまからちょうど90年前の1925年、韓国最初の近代的児童文芸誌である『オリニ』に、当時14歳の少年だったチョン・ジョンチョルの「チェンア」という詩が掲載される。『オリニ』は、日本における大正時代の『赤い鳥』と比較される文芸誌。「チェンア」という詩は、野原で死んだ一匹のとんぼを見て書かれた詩。今回は、その詩を絵本にした『とんぼ』(原題 쨍아)を紹介しよう。
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 ちょっと、待って! トンボの韓国語は「チャムジャリ」のはずなんだけどなぁ? タイトル(原題)を見て、あれっ? と首をかしげた方もいらっしゃることだろう。わたしもこの絵本とはじめてであったとき、疑問を持ったひとりだ。実は「チェンア」は、トンボを意味するソウルの方言。東京弁がみな標準語ではないように、ソウルの言葉もすべて標準語ではないのである。

 さて、内容だ。
 「野原でトンボが死にました。お花の下で死にました。アリがとむらいをはじめます」。
秋の野原。死んだ一匹のトンボに向かって、つぎか つぎからつぎへとアリがやってきて、トンボを小さなかけらに「分解」していく。
 詩人のチョン・ジョンチョルはその様子を、「たるらん たるらん」という言葉で表した。これは亡きがらを火葬場や埋葬地まで送るときに鳴らす、韓国の伝統的な鈴の音だ。
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 絵をつけた画家のイ・グワンイクはその様子を、トンボの亡きがらが色とりどりの多くの「小さな丸いかけら」になっていく絵で表した。しかもジャガイモ、ダイコン、消しゴムなどで判を押す技法を使い、命のぬくもりをも伝えたのだ。

 色とりどりの丸いかけらたちは、離れたりくっついたりしながら、やがては、お花のような形になっていく。そしてラストの場面では、トンボの死が、野原の花が大きく咲くのを助けたことを自然と気づかせてくれるのだ。

 この絵本は韓国の出版社、チャンビが企画した「ウリ詩シリーズ」のひとつとして08年に出版された。詩の発表から83年を経て、新しく蘇ったのだ。絵本を読んだ中学生が、つぎのような感想文を出版社に寄せている。

 「死はとても悲しくて、死ねばどうなるのとたずねて泣いりもした……。死ねばどうなるのと、こわがっている子どもたちがこの本を読めば安心できるんじゃないかな。心配を軽くしてくれると思う」

 めぐりめぐる命のつながりを、「とんぼの死」をつうじて表現した美しい絵本だ。

 写真の『オリニ』は1930年に11月に発刊されたのもの。

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by kimfang | 2015-10-16 17:35 | 連載