韓国絵本紹介コラム36回目です。
心打つ少女のやさしさ 寒さが一年でもっとも厳しい時期だ。今回は『ヨンイのビニールがさ』(原題 영이의 비닐우산)という、心があたたくなる絵本を紹介しよう。 韓国の国民から愛されてきた童詩や童謡に絵をつけた、「ウリ詩絵本」という人気シリーズがある。この絵本も、そのシリーズのなかのひとつ。文が詩の絵本だ。 詩人のユン・ドンジェが、この詩を発表したのは1980年代のはじめ。韓国は高度成長期に入っても、人びとの生活はまだまだ豊かではなかった。当時は多くの国民が、写真のようなビニール傘を使っていた。もちろん、しっかりとした布製の傘はあったが、裕福な人しか買うことのできないものだったのだ。 今ではビニール傘の骨は、金属でできているのが当たり前だ。ところが当時の韓国のそれは細い竹でできていて、それに薄いビニールがはられただけの、本当に粗悪なものだった。それでも、穴があいてしまったビニール傘をそのまま使っている人たちも大勢いたという。 近年、ビニール傘はスーパーやコンビニなどで手軽に買うことができ、うっかり置き忘れてしまっても別に惜しいとも思わなくなった。しかし絵本の主人公のヨンイが暮らした当時は、ビニール傘は大切なものであり、他人に気安くあげられるようなものではなかったことを知っておいてほしい。 それでは、内容だ。 雨が降る月曜日の朝。小学生のヨンイは、学校へいく道でおじいさんをみかける。おじいさんは文房具屋のとなりの塀にもたれながら座り、雨にぬれていた。その横には、雨水であふれた空き缶が置いてあった。おじいさんは物乞いだったのだ。 おじいさんは、子どもたちにからかわれ、文房具屋のおばさんからはひどいことをいわれる。それでも目を閉じたまま。 ヨンイは朝の自習の時間が終わると外にでて、眠っているおじいさんに気づかれないよう、自分のビニール傘をそっとさしかけてあげるのだった。 午後、雨はやみ、青空がもどってきた。学校が終わって家に帰る途中、ヨンイは文房具屋のとなりの塀に、ちらっと目をやる。もう、おじいさんはいない。でも、そこには……。 絵を担当したキム・ジェホンは、灰色で暗い現実を表し、緑色で人を思いやるやさしさを表した。おじいさんをからかう子どもたちの傘や、文房具屋のおばさんの服が灰色で、ヨンイの傘が緑色なのにはちゃんと理由があるのだ。 絵本を読み終えると、物乞いのおじいさんを思うヨンイのやさしと、おじいさんのヨンイに対する感謝の気持ちが心にしみわたり、心がぽかぽかとあたたかくなることだろう。 韓国の傑作絵本のひとつだ。 記事全文は、ここから読めます。
by kimfang
| 2016-01-18 19:12
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