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動物児童文学作家のキム・ファンです!!
絵本『くちばしのおれたコウノトリ』
絵本『くちばしのおれたコウノトリ』_f0004331_1146082.gif絵本・ちきゅうのともだちシリーズ

今度はノンフィクション(実話)!
絶滅したコウノトリを 再び大空へ
そんな熱い想いを絵本にしました!

キム・ファン 文 / あらた ひとむ 絵
素人(そじん)社
2003年11月発売 1500円(税別)

ストーリー
 1970年12月。
 福井県武生(たけふ)に一羽のトリがまいおりると、町は大さわぎになりました。
 それもそのはず、そのトリは日本に二羽しか残っていない特別天然記念物―コウノトリだったからです。
絵本『くちばしのおれたコウノトリ』_f0004331_11474262.gif ところが、大さわぎの原因は、それだけではありませんでした。
まいおりたコウノトリのくちばしが、約八センチもおれていたからです。
 町は白山(しらやま)小学校のせいとに、コウノトリを見守るようたのみました。
せいとたちはコウノトリを「コウちゃん」と名づけ、エサ場を作ったりフナを集めたりして見守りました。
 けれども、コウちゃんは日に日にやつれていきました。・・・・・・

「あとがき」より
絵本『くちばしのおれたコウノトリ』_f0004331_11501081.jpg 20世紀、人類は126種で145の野生復帰計画をおこないました。しかし、成功と呼べるものは、15種の16計画だけです。コウノトリの野生復帰計画も、まだ、成功してはいません。それほど自然は繊細で壊れやすく、一度失うと、容易には元に戻らないのです。けれども、コウノトリは、どんなに時間がかかっても、人間の手で自然に帰してやらねばなりません。なぜなら、彼らはわれわれの身代わりになって自然の大切さを教えてくれたのですから。
絵本『くちばしのおれたコウノトリ』_f0004331_115148.jpg  この物語を書くにあたって、こころよく取材に協力してくださった、松島興治郎飼育長、佐藤稔主任飼育員、佐竹節夫「コウノトリ文化館」館長、つたない文章にあたたかい助言をくださった梓加依先生(京都学園大学)、そしてすてきな絵をつけてくださった、あらたひとむさんにお礼を申し上げます。
 動物児童文学作家 キム・ファン)

豊岡市立コウノトリ文化館・コウノピア
館長 佐竹節夫さんのメッセージ

絵本『くちばしのおれたコウノトリ』_f0004331_11532351.jpg みなさん、こんにちは。私たちは、兵庫県の日本海側にある豊岡市で、コウノトリをもう一度自然の中に帰し、大空で自由に羽ばたかせてやる事業に取り組んでいる者です。
 先ほど、金先生からお話しがあったように、コウノトリは30年も前に日本の空から姿を消してしまいました。今では、たまに日本のどこかに大陸から渡ってくるだけです。それも冬の間だけで、大体が仲間とはぐれた1羽だけです。なぜ、コウノトリは日本からいなくなってしまったのでしょう。なぜ、大陸からたくさんのコウノトリが日本に来て、定着してくれないのでしょう。
 コウノトリが家の屋根に巣をかけている写真を見たことがありますか。そう、コウノトリは人間が暮らしているところが好きなのです。言い方を変えれば、コウノトリは、もともと人間と一緒に暮らさなければ生きていけない鳥なのです。それをかつての人々は、人間に都合のいいことだけを考えて、コウノトリのことは考えませんでした。だから、コウノトリは居場所がなくなり、追い出されて、とうとう滅んでしまったのです。そしてこれは、昔の話しだけではありません。今でも日本にはコウノトリを快く迎えてくれる場所がないので、やっぱり定着できずにすぐ大陸に帰ってしまいます。
 最近になって人々は、コウノトリが暮らせないような環境は、自分たち人間にとってもいい環境ではないことが分かってきました。公害問題が起こったり、自然が少なくなって災害が起こったりするからです。そこで、自然保護や動物のことを考え、守っていく人々が増えています。金先生は、特に熱心な方だと思います。
 豊岡市では、36年前からコウノトリを人工飼育しており、今では71羽にまで増えてきました。今年も赤ちゃんが生まれそうです。たくさんの数になったので、かつてコウノトリが暮らしていた同じ場所に放してやる計画をしています。また過去と同じように人間が追い出したら、今度こそコウノトリは全滅してしまいます。そして日本全体が人間も住みづらい国になってしまうでしょう。だから、コウノトリが帰ってきても安心して暮らせるように、一生懸命に環境づくりに取り組んでいるところです。だけども、それには長い年月がかかります。大人の人だけではとても時間が足りませんので、次の世代の人にバトンタッチしていかなければなりません。
絵本『くちばしのおれたコウノトリ』_f0004331_11573275.jpg そうです。
 みなさんの手にかかっているのです。今日の金先生の話しを思い出して、みなさんの近くにいる動物、たとえば小鳥やカエルに興味がでてきたら私たちもうれしいです。
 できたら彼ら、生きものの様子を観察してください。きっといろんな発見ができると思います。同じように、友達のことも外国の人のことも少しよく見ると、今までと違った面が分かるかもしれません。私たちはそれを、「共生」への第1歩と考えています。
 もし機会があれば、コウノトリ文化館にお越しください。コウノトリと一緒に歓迎します。

by kimfang | 2003-11-17 11:25 | 出版物