動物児童文学作家のキム・ファンです!!
カテゴリ:連載( 40 )

15/11/7 イヌは外、ネコは内 なぜ? 
韓国絵本紹介コラム30回目です。
イヌは外、ネコは内 なぜ?   
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 飼われているイヌやネコは多くの場合、イヌは外で、ネコは室内で飼われている。なぜ、そうなのか? その訳がおもしろく語られているむかし話絵本、『いぬとねこ』(原題 개와 고양이 )を紹介しよう。

 むかしむかし、おばあさんがイヌとネコと暮らしていた。スッポンを助けたおばあさんは竜宮にいくことに。何とスッポンは竜王の息子だったのだ。竜宮でたのしく暮らしたが、家に帰る日がきた。竜王がみやげをあげるというと、おばあさんは竜王の息子に教えられたとおり「竜王さまのつえに埋めこまれている、そのたまをください」といった。

 それは魔法のたま。心で思っただけで大きな屋敷やきれいな着物が現れる。おかけでおばあさんの暮らしは、見ちがえるほど豊かになった。
 ところが、うわさを聞きつけた川向うのよくばりばあさんがやってきて、言葉巧みにたまを偽物とすり替えて逃げ帰る。おばあさんの暮らしはもとどおり。元気をなくしたおばあさんを見て、イヌとネコは魔法のたまを取り返しにいくことに。

 ネコは泳げないがイヌは上手に泳げる。イヌはネコをおぶって川を渡った。よくばりばあさんの家はとても立派な屋敷になっていたのですぐにわかった。屋敷に入ったネコはネズミたちを脅して、魔法のたまを取り返すことに成功するのだ。
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 あとは川を渡っておばあさんに届けるだけ。帰りもイヌがネコをおぶって川を渡るのだが、泳ぎながらイヌが聞く。
 「おい、ねこさん。たまはあるかい?」
 「……」
 「おい、ねこさんよ! たまはあるかと、聞いているじゃないか!」
 腹を立てたネコが、「口のなかにあるともさ!」と、いった瞬間、たまは川にポチャン。

 イヌはそそくさと帰ってしまうが、ネコは川辺に打ちあげられたお腹の膨らんだ魚を見つける。ネコがガブリとかぶりつくと、魔法のたまがあるではないか! 
 手柄を立てたネコは家の中で飼われ、イヌは家の外で飼われるようになったとさ、というお話だ。

 実は日本にも、これとそっくりの『いぬとねことふしぎなたま』というむかし話がある。助けるのが白ヘビ、金の粒をだすたまというところが少しちがうところ。イヌとネコが川を渡り、ネズミを脅してたまを取り返すのも、ネコがしくじって川にたまを落とすのも一緒。けれども、韓国のお話とまったくちがうのは最後の最後。イネとネコが仲良く一緒にたまを届けるところだ。

 各国のむかし話は似ているけれど、どこかちがう。ちがうから、おもしろいのである。

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by kimfang | 2015-11-09 20:21 | 連載
15/10/31 おいしいよ!韓国料理
韓国絵本紹介コラム29回目です。
おいしいよ!韓国料理

 食欲の秋だ。おいしい韓国料理をつくってみては! 
 「韓国料理をつくってみたいわ。でも、どうやってつくればいいのかよくわからないのよ。それに韓国料理の本はどれもみな本格的すぎて、わたしにはむずかしすぎるわ」
 と思ったみなさんに、ぜひ、おすすめしたい本がある。『おいしいよ! はじめて つくる かんこくりょうり』(原題 고사리손 요리책)だ。

 原題を直訳すると「わらびの手 料理本」となる。「わらびの手」というのは、韓国で子どもの手のことを表すときに好んで使われる表現だ。つまりは、子どもでもつくることのできる料理本だから、むずかしい料理はない。
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 ではひとつだけ、最初の「おすを いれない かんこくのりまき」のページを紹介してみよう。
 料理のタイトルの下に目をやると、
 こめ 1カップ
 やきのり 3まい
 きゅうり 1ぽん……。というように、材料がすべてイラストで描かれている。その右側には、
 1 こめを といで ふっくらと ごはんを たきます。
 2 のりは はんぶんに きります。
 3……というように、具体的なつくり方が、これまたイラスト入りで簡潔に説明されている。
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ページの最後には、「おとなのかたへ」という説明書きがあり、
「韓国ののりまきは、ごはんにお酢を入れません。韓国ではキムパプと呼ばれています。キムはのり、パブはごはんのことです。……日本ののりまきより、薄く(1.5センチくらい)切るのがポイントです」と書かれている。
これなら簡単に韓国料理がつくれるだろう!

 ほかにどんな料理が紹介されているのかというと、「やさい たっぷり はるさめチャプチェ」、「ふわっ ふわっ ちゃわんむし」、「さっぱり さわやか オミジャ茶」、「もっち もっち じゃがいものチヂミ」など30種。

 ところでこの絵本はとても「贅沢な絵本」だ。総合演出は、『うさぎのおるすばん』でニューヨークタイムズ「年間優秀絵本」に輝いたイ・ホベク。デザインは、『マンヒのいえ』や『しろいは うさぎ』といった作品で、今や韓国を代表する絵本作家となったクォン・ユンドクが担当しているからだ。
 韓国での発売から20年を迎えた今も、多くの支持を得ているロングセラー絵本だ。

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 キムパプの写真は、うちのカフェが提供しました。プルコギが入ったキムパブです^^
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by kimfang | 2015-10-31 18:32 | 連載
15/10/16 めぐりめぐる命のつながり
韓国絵本紹介コラム28回目です。
めぐりめぐる命のつながり    
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 あれほど群れ飛んでいた赤とんぼも、すっかりいなくなった。どこかにいってしまったのではない。命をまっとうしたのだ。
 いまからちょうど90年前の1925年、韓国最初の近代的児童文芸誌である『オリニ』に、当時14歳の少年だったチョン・ジョンチョルの「チェンア」という詩が掲載される。『オリニ』は、日本における大正時代の『赤い鳥』と比較される文芸誌。「チェンア」という詩は、野原で死んだ一匹のとんぼを見て書かれた詩。今回は、その詩を絵本にした『とんぼ』(原題 쨍아)を紹介しよう。
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 ちょっと、待って! トンボの韓国語は「チャムジャリ」のはずなんだけどなぁ? タイトル(原題)を見て、あれっ? と首をかしげた方もいらっしゃることだろう。わたしもこの絵本とはじめてであったとき、疑問を持ったひとりだ。実は「チェンア」は、トンボを意味するソウルの方言。東京弁がみな標準語ではないように、ソウルの言葉もすべて標準語ではないのである。

 さて、内容だ。
 「野原でトンボが死にました。お花の下で死にました。アリがとむらいをはじめます」。
秋の野原。死んだ一匹のトンボに向かって、つぎか つぎからつぎへとアリがやってきて、トンボを小さなかけらに「分解」していく。
 詩人のチョン・ジョンチョルはその様子を、「たるらん たるらん」という言葉で表した。これは亡きがらを火葬場や埋葬地まで送るときに鳴らす、韓国の伝統的な鈴の音だ。
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 絵をつけた画家のイ・グワンイクはその様子を、トンボの亡きがらが色とりどりの多くの「小さな丸いかけら」になっていく絵で表した。しかもジャガイモ、ダイコン、消しゴムなどで判を押す技法を使い、命のぬくもりをも伝えたのだ。

 色とりどりの丸いかけらたちは、離れたりくっついたりしながら、やがては、お花のような形になっていく。そしてラストの場面では、トンボの死が、野原の花が大きく咲くのを助けたことを自然と気づかせてくれるのだ。

 この絵本は韓国の出版社、チャンビが企画した「ウリ詩シリーズ」のひとつとして08年に出版された。詩の発表から83年を経て、新しく蘇ったのだ。絵本を読んだ中学生が、つぎのような感想文を出版社に寄せている。

 「死はとても悲しくて、死ねばどうなるのとたずねて泣いりもした……。死ねばどうなるのと、こわがっている子どもたちがこの本を読めば安心できるんじゃないかな。心配を軽くしてくれると思う」

 めぐりめぐる命のつながりを、「とんぼの死」をつうじて表現した美しい絵本だ。

 写真の『オリニ』は1930年に11月に発刊されたのもの。

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by kimfang | 2015-10-16 17:35 | 連載
15/10/3 絵本でチュソク伝える
韓国絵本紹介コラム27回目です。
絵本でチュソク伝える

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「チュソク」は旧暦の8月15日。今年は9月27日だった。ぼくたちは単にチュソクというが、韓国では「ハンガウィ」とか、「中秋」とも呼ばれている。中秋といえば日本では「中秋の名月」。満月をめでながら月見団子を食べる日だが、韓国では国民の多くが故郷に帰ってご先祖さまにお供えものをし、お墓参りにいく日だ。
 今回は、そのチュソクを題材にした絵本、『ソリちゃんのチュソク』(原題 솔이의 추석 이야기)を紹介しよう。

 作者のイ・オクベは、2004年に富山県で開催された「第7回アジア児童文学大会」のシンポジウムにパネラーとして招かれ、つぎのように語った。
 「名節のチュソクは、ほとんどの伝統文化が消えさった今日でも、生き残ってきたいくつかの伝統文化のなかのひとつです。…わたしたちの美しい風習を、子どもたちに絵本をつうじて伝えたかったのです」

 そう。彼は自らの娘であるハンソル(ソリちゃん)のために、はじめての絵本をつくった。さて、内容だ。実はこの絵本にはストーリーがない。ソリちゃんの目をつうじてチュソクを記録した、ドキュメンタリーなのだ。

 チュソクの前日、まだ暗いうちにソリちゃんたちは家をでる。でも、バスターミナルはもうすでに人でいっぱい。出発したけれど車はなかなか進まない。休憩所で、カップラーメンを売っている人たちがいて、そのラーメで腹ごしらえ。日が暮れるころ、ようやく故郷に着く。表紙の絵は、ソリちゃん一家がハルモニの家に到着したときの絵だ。
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 その夜、親戚たちが集まり、月を見ながらソンピョン(松餅)を食べる。(写真右)
 いよいよチュソクの日、朝早く起きてご先祖さまに料理を供えて茶礼をし、お墓参り。能楽隊のおはやしに合わせて、みんなでたのしく踊る。そしてつぎの日の朝、故郷をでて、夜遅くに家にもどるのだ。

 イ・オクベはあるインタビューのなかで、「絵本は10前のチュソクの光景だ」といっている。絵本が発売されたのが95年だから、今から30年ほど前のチュソクの様子が記録されているということになる。

 ところでこの絵本は、01年の「青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書に選ばれた。翌年に、サッカーのワールドカップ韓日共催などがあり、韓国をよく知るために選ばれたのだろう。韓国の本が課題図書に選ばれたのは、あとにも先にも、この絵本ただひとつだけなのだ。

 韓国の人たちの生活のなかで今日も生き残っている伝統文化、チュソクを伝えるこの絵本は、日本だけでなく、台湾、中国、アメリカ、スイス、フランスでも出版されている。

 記事全文はここから読めます。

 この絵本のなかに、高速の休憩場らしき場所の絵がある。渋滞で疲れ切ったいろんな人たちを描いているのだが、ソリちゃん一家はカップラーメンを食べる。最初見たとき、えっ? カップ麺、売っていいの?!とおどろいた。
 今から30年前の1985年の光景と知って納得(笑)
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by kimfang | 2015-10-03 14:42 | 連載
15/9/16 家族の健康願う「十長生」 
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韓国絵本紹介コラム26回目です。
家族の健康願う「十長生」   
 
 もうすぐ敬老の日。そこで今回は、ハラボジと孫の心のふれあいを描いた絵本、 『十長生をたずねて』(原題 십장생을 찾아서)を紹介しよう。

 ある日、大好きだったハラボジが病気になってしまった。孫の女の子が悲しみにくれていると、突然、ツル(鶴)が現れて、いう。
 「長生きしたり、病気にならない十のものを『十長生』というの。
 むかしの人びとは、家族の健康をいのって、 『十長生』のもようで家のなかのものをかざったわ」

 ツルがいう「十長生」(シプチャンセン)とは、太陽、松、ツル、シカ(鹿)、不老草(霊芝)、岩、水、カメ(亀)、山、雲などの10個。  右下の写真は屏風に描かれた「十長生図」

 ツルにいわれて女の子は、
「じゃあ、『十長生』を集めてもっていくのはどうかしら?」
 そう。「十長生」を集めていくのがこの絵本の一番の見どころだが、それをただ単に絵だけで表現していないところがこの絵本のすごさなのだ。
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 先ほどから登場しているツルは刺しゅうで、シカを集める場面では螺鈿を使っている。水を集める場面も「チョガッポ」という、韓国伝統のパッチワークで表現している。
 つまり、ただ絵で描くだけではなく、作者自らがししゅうを刺したり、伝統的な家具から飾りを取りはずして並べたり、実際にパッチワークを縫ったりしたものをコラージュして、それを写真に撮って絵をつくりあげているのだ。

 わたしはこの絵本を担当した編集者と一緒に本をつくったことがあり、彼女からこの絵本の創作秘話を聞くことができた。
 「作家さんは、女の子が山に登って雲を取るシーンを焼き物で表現するのに一番苦労されていました。
 焼き物はいくら正確に下絵をつけても、なかなかそのまま焼きあがらないものでしょ。下絵をつけては焼いて、焼き上がりに納得できなくてまた焼いて、何十枚も焼いて、ようやく絵本に使える一枚を得ました」

 女の子はついに「十長生」を集めてハラボジに届ける。果たしてハラボジは健康を取りもどすことができたのだろうか? 
 その答えは絵本を読んで確かめて。女の子の心の成長を知ることになるだろう。

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by kimfang | 2015-09-16 18:33 | 連載
15/9/10 シルム 手に汗握る大一番 
韓国絵本紹介コラム25回目です。
シルム 手に汗握る大一番     
 
 今回は、力自慢のチャンサ(壮士・力士のこと)たちの戦いを迫力満点に描いた絵本、『シルム 韓国のすもう』(原題 씨름)を紹介しよう。
 シルムとは、むかしから韓半島で行われてきた運動競技。シルムという言葉の由来には諸説あるが、「たいへんなことを成し遂げるために努力する」という意味の「シルダ」からできた言葉というのが一般的だ。
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 右下の写真は朝鮮朝時代の画家、キム・ホンドの民俗画だ。この絵からも、シルムが当時の人たちにとって欠かすことのできない、大切なものだったことがうかがい知れる。
 シルムは、正月15日の大ポルムナル、3月3日のサムジンナル(上巳の節句)、5月5日のタノ(端午の節句)、7月15日のペクチュン(百中)、8月15日のチュソク(秋七)などの節句に行われた。

 シルムを見ようと、村じゅうの人たちが川辺の砂地や市の広場に集る。その見物客を目当てに、餅、飴、クッパ、ノリゲ(女性用の装飾品)、靴などを売る商人がまたやってきて、たくさんのお店を並べた。

 そして競技が終わると、この世で一番強いチャンサ―「天下壮士」が現れたことを祝って農楽隊がにぎやかに歌って舞ったのだ。このようにシルム大会は、単なる運動競技ではなく、村じゅうの老若男女が一緒にたのしむ大切なお祭りだったのだ。
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 さて、絵本の内容だ。
 端午の節句の日、川辺の砂地に、わいわい、どやどや、見物客がおしよせまた。次つぎとチャンサが負けて最後に残ったのは、たったふたりの男。

でてきた、でてきた、赤のチャンサ。
うおっ! 山のようにでっかいぞ!

でてきた、でてきた、青のチャンサ。
おやっ! ナツメの実ほどちっちゃいよ!

 赤のサッパ(腰と太ももに巻くひも)、青のサッパ、ぐっとしめ、礼儀正しくおじぎ。
 がっちりふたりが組み合って、相手のサッパをつかんだら、いざ、勝負!

 ところで、韓国のシルムは日本のすもうとよく似ているが、決定的にちがうところがある。シルムは組み合ってから勝負がスタート。相手を倒した方が勝ち。日本のすもうのような 「つっぱり」「寄り切り」「押しだし」がない。

 さぁ、赤のチャンサと青のチャンサの勝負。勝ってウシをもらい、そのウシに乗って農楽隊と村を練り歩いのはどちらか? 手に汗握りながら絵本を読んで、大一番の結末を見届けて。

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by kimfang | 2015-09-10 14:35 | 連載
15/8/28 サプサル犬 大活躍
韓国絵本紹介コラム24回目です。
サプサル犬 大活躍 
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 韓国には、韓国ではじめて国際公認犬と認められた全羅南道珍島の珍島犬(チンドッケ)、尾っぽがなかったり極端に短かいのが特徴の慶尚北道慶州の慶州犬(キョンジュゲ)、毛が長くてふさふさしている慶尚北道慶山のサプサル犬(親しみをこめて「サプサリ」とも呼ばれている)という韓国原産のイヌがいる。

 今回はサプサル犬が主人公の絵本、『くらやみのくにからきたサプサリ』(原書 까막나라에서 온 삽사리)を紹介しよう。
 サプサル犬の「サプ」とは追い払うという意味。「サル」は悪鬼のたたりを指す言葉。つまり、「悪鬼を追い払うイヌ」。
 新羅の王室で大切に育てられ、名将キム・ユシン将軍が軍犬として戦場に連れていたという伝説も伝わっている。
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 高麗の時代になると一般の人たちも飼いだし、朝鮮朝時代後期には新年に厄払いとしてサプサル犬が描かれた絵を家の門に貼るのが流行したという。

 危機が訪れるのは日本統治時代、アジア・太平洋戦争末期。このとき、日本の飼い犬たちは絶望のなかにいた。 
 「イヌも、お国の役に立ちます。供出しましょう」
 そうやって集められたイヌのなかで、勇猛なものは戦闘用に訓練されて戦地に赴いたが、多くのイヌたちはすぐに殺され、その毛皮は軍服や軍靴となって戦地に送られたのだ。

 日本国内のイヌでさえもこのようなありさまだから、植民地だった韓国のイヌたちの受難は想像にあまるものがあった。とりわけむごい仕打ちを受けたのが、ほかでもない、軍服や軍靴を作るのに最適な毛を持っていた、サプサル犬だったのだ。
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 「サプサリは、きっとどこかで生き残っている!」 
 1969年、慶北大学の若い獣医師ふたりは、全国を歩き回って30頭のサプサル犬を探しだす。けれどもその価値は認められず、一時は8頭にまでに減り、まさに絶滅寸前だった。
その後、アメリカから帰国したハ・ジホン教授たちの努力により復活。ようやく92年に、天然記念物に指定されたのだ。

 さて、絵本の内容だ。韓国には「暗やみの国の火の犬」という、むかし話がある。暗やみの国の王さまは、太陽がうらやましくてならない。そこで火の犬に命じて太陽を取りにいかせるが、思うようにいかない。それでも犬たちはあきらめることなく、宇宙を駆けまわる。太陽が無理なら月でも盗もうと、果敢にかじりつく。日食や月食が起こるのは、火の犬たちのしわざだという話だ。

 絵本は、このむかし話にもとづいて作られた。むかし話では火の犬の犬種は特定されていないが、作者はサプサル犬とした。また、むかし話にはでこない、玄武、清龍、白虎、朱雀の四神も登場させた。
 むかし話は、スケールの大きな新しい物語となって現代に甦ったのである。

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 韓国の絵本が本格的に日本で紹介される前だった2000年、日本を代表する児童文学作家の故松谷みよ子氏は、同じむかし話を題材にした絵本『火をぬすむ犬』太平出版社をだしている。

 ぼくはこのむかし話をこの絵本で知ったが、サプサル犬については、2003年の読売新聞で知った。すぐにでもこのイヌに会いたかったが、ようやく2006年に「慶山サプサル犬牧場」を訪れることができた。
 あいにく、ハ教授にはインタビューできなかったが、教授の指導を受けている若い研究者からいろいろな話を聞くことができた。

 サプサル犬の訓練も見せてもらうことができた。


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 そのかいあって、『人間の古くからの友だち、イヌ』(2013年)をだすことができた。
 もちろん、この本にはサプサル犬のことを詳しく書いている。

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by kimfang | 2015-08-28 17:42 | 連載
15/7/31 むかし話を紙芝居に
韓国絵本紹介コラム23回目です。
むかし話を紙芝居に    
 
 今回は絵本ではなく、紙芝居を紹介しよう。
 わたしは韓国で講演をすることがよくあり、自分の紙芝居を韓国語で演じてきた。けれども依頼者との打ち合わせのときには、「紙芝居って何ですか?」と質問されることもよくある。紙芝居は日本独自の文化。外国にはない。もちろん、韓国にも。
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 紙芝居は、1930年ごろに東京の下町で「街頭紙芝居」として誕生した。55年のブーム時には、全国で約2万人が紙芝居で生計を立てていたともいう。しかしテレビなどの普及により、徐々に衰退していった。

 一方、紙芝居作家の高橋五山などの努力により、「教育紙芝居」として発展していく。近年、、生身の人が語る紙芝居は、幼い子どもたちの成長にかけがえのない文化財だと見直されるようになった。それだけではない。アメリカ、フランス、ドイツ、ベトナムなどでも出版され、「紙芝居」から「KAMISHIBAI」というように国際化しつつあるのだ。

 そんななか、イ・スジンは韓国のむかし話を題材に紙芝居をつくり、紙芝居唯一の最高の賞である、「高橋五山賞」を2年連続で受賞するという快挙を成し遂げた。今回はその、ふたつの受賞作を紹介しよう。

 『アリとバッタとカワセミ』(童心社)は、むかしむかし、まだアリがずんどうで、まだバッタに髪の毛が生えていて、まだカワセミのくちばしが短かったころの話だ。アリが人にかみついて得た麦飯をみんなで食べていると、
 「ふんっ、オレはもっといいものを取ってくるぞ」とバッタがいった。
 ところがバッタは、魚を捕ろうとして逆に食べられる。バッタをさがしに飛んできたカワセミは、目の前に現れた魚をつかまえた。アリと食べようとしたら、魚のなかからバッタが現れたのだ。
 食べられたんじゃない。わざと魚のなかにいたんだと、バッタはしきりにおでこの汗をふいたので髪の毛がなくなり、カワセミは自分が魚をとったと文句をいい過ぎてくちばしが長くなり、アリは笑いすぎて、腰が細くなったとさ――。
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 『りゅうぐうのくろねこ』(童心社)は、ミカンの由来のお話。ヤイは木を売るのが仕事だがあまり売れない。だれかの役に立てばと、海辺に置いて帰る。
 するとある日、木がとても役にたったと竜宮に招待されたのだ。竜王は、小豆を5粒食べると、お尻から金をだす黒ネコを贈り物としてあたえる。
 ヤイがお金持ちになったことを知ったヤイのお姉さんは、黒ネコを借りると、小豆を無理やりたくさん食べさせた。かわいそうにネコは死んでしまう。ヤイがお墓を立てて手を合わせると、小さな芽がでて、やがて木はどんどん大きくなり、黄金色の実をつけた。それが、ミカンの木のはじまり。

 夏休み、みんなで韓国のむかし話の紙芝居をたのしんではいかが。

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by kimfang | 2015-08-03 16:04 | 連載
15/7/16 絵本で知る伝統市場
韓国絵本紹介コラム22回目です。
絵本で知る伝統市場

 韓国へ旅行される方にお勧めしたい観光スポットがある。韓国で伝統市場とか、在来市場とか呼ばれている、むかしながらの町の市場だ。 
 いったいどのような店があって、どんな物が売っているのだろうか? それを体験することができるのが今回紹介する絵本、『ハンヒの市場めぐり』(原題 한이네 동네 시장 이야기)。
オンマと息子のハンヒが、近くにある「サムタルレ市場」で買い物をする様子を描いた、知識の絵本だ。
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 オンマはまず、ご飯に混ぜる豆を買う。すると「豆屋さんをのぞいてみよう」というページがでてきて、ハルモニが営む豆屋さんのことが詳しく解説される。豆だけでなくて手づくりの豆腐や、ムク(ドングリなどの粉を煮固めた物)も売っている。むかしよく食べたなつかしいムクが紹介されていると、何だかうれしくなってしまう。

 その後もオンマはハンヒの手をひいて、オムク(魚のすり身でつくられたねり物)を買ったり、ごま油を買ったりする。
 「魚屋さんをのぞいてみよう」のページは、ハンヒが大きなマンボウを見ておどろいている絵が印象的だ。子どもたちが大好きな花屋さんや、ペットショップもでてくる。

 絵はとても細かくて、店の看板や値札までもしっかりと描かれて、当然のことながら、それらはみな韓国語。一部は日本語に訳してあるが、ハングルが読める人ならなおたのしいだろう。

 わたしは絵本の舞台となったサムタルレ市場にいってみようと思ったが、市場がどこにあるのか何も書いてない。絵本にはプサンの名がついた看板がいくつかでてくるし、作者もプサン生まれなので、きっと、プサンにあるにちがいない。ちょうど仕事でプサンの近くにいくことになったので、プサンの友人に探してもらった。しかしそのような名前の市場はなかったのだ。
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 そこで今度は、出版社に勤める友人にたずねてみた。すると、作者の講演会の記事を送ってくれた。作者は市場について、
 「わたしがよくいく、ソウル・マポ区のソンサン市場と、幼いころに見ていたプサンのチャガルチ市場、パルト市場、スヨン市場のそれぞれのおもしろい要素を集めてつくりました」 
 と、話している。なぁんだ、絵本の市場は実際にはなかったんだ。そして絵本をつくったきっかけについても語った。

 「わたしたちの生活の一部である市場が、在来市場とか、風物市場だとか呼ばれて、特別な存在と認識されている現実が惜しいのです。市場のいい記憶を、子どもたちに話してあげたかったのです」

 作者は何度も何度も市場に通っては写真に撮って、インタビューを録音したという。粘り強く絵本に市場を「記録」したのだ。作家の熱い想いと努力に感服してしまう絵本である。

 写真は、マサンの魚市場の様子。さすが本場、韓国! 高麗人参がかごに入れられてふつうに売られていた^^

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by kimfang | 2015-07-16 17:51 | 連載
15/7/9 世界で活躍 スージー・リー
韓国絵本紹介コラム21回目です。
世界で活躍 スージー・リー
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 今回は子どもたちに未来の夢をふくらませるお話をしよう。世界で活躍している韓国人イラストレーター、スージー・リーの話だ。
 わたしが彼女のことをはじめて知ったのは2005年。『動物園』(日本語版未刊)という絵本を見たとき。その表現力のすごさにおどろき、すごい新人がでてきたなと感じた。あとで知ったことだが、もうすでに彼女は海外でも本をだしていた。そのときわたしが記憶したのは「イ・スジ」という韓国名だった。
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 イ・スジは、ソウル大学を卒業したあと、イギリスに留学。自らの卒業作品を出版したいと願ったが、ダメだった。しかし彼女はあきらめなかった。その作品を持って、イタリアのボローニャ国際児童図書展にいったのだ。
 イ・スジの作品は幸運にも地元イタリアの出版社の目に留まり、彼女は韓国ではなく02年にイタリアでデビューした。
 さらにスイスでも出版。スイスでだした絵本が、03年と05年のボローニャの「今年のイラストレーター」に。そしてアメリカでだした『なみ』が08年の、さらに『かげ』も10年のニューヨークタイムズの「年間最優秀絵本」に選ばれたのだ。
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 『なみ』(原書 WAVE)は、浜辺にやってきた少女が波と遊ぶ様子をたった2色で描いた。モノクロの少女が小さな波と遊んでいると、やがて大きな波がやってきて、頭から水をかぶる。すると、少女の服と空も青色に。そして少女に、波からすてきなプレゼントが……。

 スージー・リーは、絵だけで、ざわめきや光、ぬくもりまでも感じさせたと、世界的に高い評価を得た。そうなのだ。この絵本には、文がまったくないのだ。ニューヨークタイムズでの受賞を機に、世界各国から出版の申し込みが殺到する。もちろん、彼女の母国である韓国からも。

 『かげ』(原書 SHADOW)も文がない。物置で明かりをつけた少女が、道具を使って動物の影をつくって遊ぶ様子を2色だけで描いた。動物の影がやがて本物ように動きだし、少女の影と仲良しに。そのとき、突然……。

 日本で出版されている彼女のほかの作品としては、『このあかいえほんをひらいたら』(講談社)がある。アメリカの作家が書いた文に絵をつけているのだが、びっくりするしかけがある。
このようにスージー・リーは、世界で活躍する韓国人イラストレーターのなかのひとりであり、代表的な存在なのだ。

 さて、彼女の成功の秘訣は、いったい何だったのだろう? もちろん才能が第一だが、決してあきらめなかったこと。そして自の才能を認めてくれる場を求めて、積極的に海外に飛びだしたことだろう。
 子どもたちには彼女の絵本をたのしみながら、世界で活躍する夢も育んでもらいたいものだ。

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by kimfang | 2015-07-09 13:12 | 連載