動物児童文学作家のキム・ファンです!!
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16/6/24 雲入りパンで空を飛ぶ
韓国絵本紹介コラム20回目です。
雲入りパンで空を飛ぶ   
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 外にでるのもおっくうになりがちなうっとうしい梅雨。でも、雨降りも悪いことばかりじゃないなぁと思ってしまう、『ふわふわ くもパン』(原題 구름빵)を紹介しよう。

 ある朝、目覚めると雨が降っていた。子ネコの兄弟がレインコートを着て外にでてみると、小さな雲が木の枝にひっかかっているではないか。兄弟は雲を壊さないように、そうっと抱えてオンマに持っていく。朝食の準備をしていたオンマは、雲を入れたパンを焼いた。

 オンマがオーブンを開けると、あら不思議、パンがふわりふわり。子ネコの兄弟がパンを食べると、子ネコたちもふわりふわり。
 「そうだ! くもパンを持っていってあげようよ」
 兄弟は空を飛んで、朝ごはんを食べずに会社にいってしまったアッパを探す。アッパは、ぎゅうぎゅうづめのバスに乗っていた。アッパもくもパンを食べると……。

 この絵本の魅力は、雲が入ったパンを食べて空を飛ぶというユニークな発想にある。でも、それを表現した「絵」がまた、何ともすばらしい。
 絵本の作者、ペク・ヒナはカリフォルニア芸術大学でキャラクターアニメーションを学んだ。アメリカで得た知識と経験を活かして、独特の立体技法をつくりだした。
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 たとえば登場人物であるネコたちは、色鉛筆で描いた絵を切り取った顔に、本物の布を使った服を着せている。まるで人形のように立体的に見えるのだが、実際はただの薄い紙。それを背景となる小さなセツトのなかにうまく配置し、写真に撮った。

 写真絵本というのは、どうしても絵で描かれた絵本と比べて、何か冷たい感じがしてしまうものだ。しかしこの絵本の写真は、そのような感じがまったくしない。その秘密はおそらく、キャラクターを紙で作ったところにあるのだろう。紙が持つあたたかみが活きているのだ。

 ペク・ヒナはこの絵本の原画で、2005年の「ボローニャ国際絵本原画展」において、今年のイラストレターに選ばれた。2004年の発売以来、今も売れ続けている大ベストセラーだ。テレビアニメやミュージカルになっただけでなく、多様なキャラクター商品がたくさん発売されている。
 いわば韓国人ならだれもが知っている「国民的童話」なのだ。

 ところがその人気は国内だけに留まらなかった。絵本はフランス、ドイツ、中国、ノルウェーなど、世界の8カ国でも発売された。さらにKBSが制作したテレビアニメは、ヨーロッパや中東など、世界の16か国で放映されたのだ。
 
 ネコの兄弟は、雨が降っていても外にでて雲を見つけた。たとえ雨降りでも、外にでると、何かいいことが起こるかもしれない。

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by kimfang | 2015-06-24 19:32 | 連載
15/6/11 絵のなかに隠された絵
韓国絵本紹介コラム19回目です。
絵のなかに隠された絵

 川遊びにいくのなら、今回紹介する絵本、『かわべのトンイとスニ』(原題 동강의 아이들)を読んでからでかけてほしい。そういうと、川遊びが紹介してある絵本? 川で起こる冒険物語? と期待させてしまうかもしれないが、ストーリー自体はとてもシンプルだ。

 朝早く、オンマは町へゴマや豆を売りにでかけていく。妹のスニには色鉛筆、兄のトンイには運動靴を買ってくると約束して。
 でも、兄妹はオンマの帰りを待ちきれない。トンイは、オンマを迎えにいこうとだだをこねるスニを連れて近くの川原にやってきた。それでもスニのわがままはおさまらない。
 トンイは、川原の石で水切りをして見せたり、おんぶをしてあげたりして、一生懸命スニをなだめる。お日さまが山の向こうへ隠れたころ、オンマが川原を歩いてもどってくる。ストーリー自体は、本当にシンプルでしょ。
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 でも、この絵本の素晴らしいところは、何気ない風景の絵のなかにもうひとつの絵がこっそりと隠されていて、それを見つけるたのしみがあるところだ。

 ストーリーに合わせて、①大きな鳥 ②子グマの顔 ③頭に荷物を乗せたオンマ ④妹をおんぶする兄 ⑤炭鉱で働くアッパ ⑥やさしいオンマの形をした岩が、川原の自然の風景のなかに隠してある。
もしも川にいったならば、この絵本のように、何かに見える岩を探してみるのもいいだろう。 

 ところで、この絵本の原題を直訳すると、『東江(トンガン)の子どもたち』となる。韓国には、ソウルを流れる漢江をはじめ多くの川があるが、作者がわざわざ「東江」と題してこだわったのには理由があった。
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 この絵本は、2000年の6月に韓国ででた。ちょうどそのこの、韓国中の視線は江原道の東江に注がれていたのだ。そして韓国史上、はじめての出来事が起こる。市民の力で、ダム建設計画が白紙撤回されたのだ。この「東江ダム建設反対運動」のシンボルとなったのが、カワウソだった。

 日本では1979年を最後に確認されていないが、韓国ではまだ生き残っている。カワウソを絶滅から救おうという市民たちの声が、東江の自然を守ったのだ。

 作者のキム・ジェホンは、東江の自然を守りたいという想いを絵本で表現した。ダム建設白紙撤回から今年でちょうど15年。今もその想いは、絵本とともに読み継がれている。

 この絵本はフランスでも発売され、2004のスイス・エスパス‐アンファン賞を受賞した。

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by kimfang | 2015-06-11 20:40 | 連載
15/5/29 天才作家唯一の童話
韓国絵本紹介コラム18回目です。
天才作家唯一の童話
     
 みなさんは「トッケビ」をご存知かな? 韓国のむかし話の定番といえば、トッケビ! たくさんのお話がある。でも、あまりピンとこないことだろう。トッケビは韓国独自の想像上の生きもの。日本にはいないから。日本語で説明するのはかなりむずかしいが、あえていうならば、お化け、妖怪、鬼といったところか?  

 けれどもトッケビは、死んだ人が化けたものではない。自然物から生まれてくるともいい、また、古い生活道具などから生まれるとも。その姿はまちまちで、いろいろなものにも化ける。このように日本語でピタリと当てはまるものがないので、そのままトッケビと訳されているのだ。
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 今回は、そのトッケビがでてくる数あるお話のなかでも、とりわけ有名な『うしとトッケビ』(原題 황소와 도깨비)を紹介しよう。これはむかし話ではない。近代韓国を代表する作家、イ・サンが1937年3月に発表した童話だ。

 まき売りのトルセは大切なウシと暮らしていた。ある日、暗い森のなかを歩いていると、突然、トッケビの子が現れる。トッケビはイヌにしっぽをかまれてしまい、傷が治るまで術が使えなくて帰れない。
ふた月の間だけウシのお腹のなかに入れてもらえないかと必死に頼む。その代わり、ウシの力を今の10倍にすると約束する。
トルセが頼みを聞き入れてやると、ウシの力が本当に10倍も強くなった。以前にも増して自慢のウシだ。
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 やがて約束のふた月が過ぎた。ところがトッケビの子は太ってしまい、ウシののどからでられない。トッケビがウシのお腹を破れば、ウシは死んでしまう。果たしてウシは、トッケビは……。

 作者のイ・サンは、詩、随筆、小説など、多様なジャンルで優れた作品を書いたが、27歳という若さで亡くなる。天才作家と呼ばれるイ・サンが唯一書いた童話を絵本化したのが、今回の絵本だ。

 また、絵をつけたハン・ビョンホは、トッケビを描かせたら右にでるものがいないといわれている天才画家。ふたりの天才が、韓半島の不思議な存在であるトッケビと人間との友情をほのぼのと描いた。

 イ・サンの死から40年が経った1977年。その功績が高く評価され、「イ・サン文学賞」が創設された。この賞は韓国最高の文学賞といわれていて、毎年、受賞作は多くの注目を集めている。

 写真は昨年の文学賞受賞作品集。そして、イ・サン。

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by kimfang | 2015-05-30 15:37 | 連載
15/5/14 韓国はトラ 日本はオオカミ
韓国絵本紹介コラム17回目です。
韓国はトラ 日本はオオカミ
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 久しぶりに、トラがでてくるむかし話絵本を紹介しよう。
 むかし、深い山奥に千年も生きぬいた、白いまゆ毛のトラがいた。トラには不思議な力があって、白いまゆ毛からでる光にあてると相手の本当の姿が見えるのだった。
 トラは山に人間がやってくるたびに、不思議なまゆ毛をかざす。人間の姿をしているが、本当は泥棒イノシシ、ずるがしこいキツネ、欲張りなタヌキ。トラは人間の本当の姿を見ぬくと容赦なく飲みこんでしまう。

 ところが何年かすると、山にまったく人間がこなくなる。その原因を探ろうと、白いひげのハラボジに姿を変えて町におりると、よくないうわさをしていた。
 「あの山の峠にはトラがいて、心のきれいな者だけを食ってしまうんだ!」
「何てことだ! 悪いトラだ!」
 トラがまゆ毛をかざして見てみると、みんな毒ヘビみたいなヤツばかり。

 しかしわら帽子の女の子だけは、白いひげのハラボシがトラだと見ぬいてしまう。あわてて山にもどったハラボシ姿のトラは、わら帽子の女の子がこっそりあとをつけていることに気づかない。元のトラの姿にもどるや女の子は、トラに向かっていった。

 「人の心のなかが、わかると聞きました。どうかわたしに、その力をさずけてください。人を助けるときに使いたいのです」
 「ならばお前の心のなかを見てみよう。悪い動物に見えたらすぐに食ってしまうぞ!」
 トラがまゆ毛をかざして見た女の子の姿は……。

 実はこのむかし話、日本では「オオカミのまゆ毛」というお話で、東北地方、関西、四国、九州に伝わってきた。
 おおよそつぎのような内容だ。ある村に貧乏なおじいさんがいた。働けど働けど暮らし向きはよくならない。ある日、山でオオカミと出会う。ところがオオカミは、おじいさんを食べないのだ。
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 「お前は働き者で正直な真人間だ。いくらオオカミでも真人間は食べない」
そういうとオオカミは、人の本当の姿が見えるまゆ毛をくれた。村に帰ってまゆ毛でかざして見ると、村人はみんな動物ばかり。人はいない。たったひとり人の姿をしていた庄屋さんは、おじいさんを守り神だと思い、家に連れてかえって大事にする。

 話をもとの絵本にもどそう。作者は最後にこう問いかけている。
 「さて、ところで君たちの心はきれいかな?」 

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by kimfang | 2015-05-14 19:53 | 連載
15/5/1 赤いモンペのアナグマさん
韓国絵本紹介コラム16回目です。
赤いモンペのアナグマさん
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 春らしくなってきて、花がたくさん咲きはじめた。今の季節にピッタリの『あなぐまさんちのはなばたけ』(原題 오소리네 꽃밭)を紹介しよう。
 ある日、山の峠の陽だまりでいねむりをしていたアナグマおばさんは、つむじ風によって街まで吹き飛ばされてしまう。人に見つからないよう急いで帰る途中、ふとのぞいた学校に花畑があった。
アナグマおばさんは、名前も知らないきれいな花にうっとり。

 「わたしも家に、きれいな花を咲かせよーっと!」
 山の家に帰ったおばさんは、アナグマおじさんと一緒に花畑をつくろうとするのだか、
 「あー、おまえさん! それはナデシコよ。掘っちゃ、ダメ!」
 「アイゴ―! それはツリガネニンジンよ。掘っちゃダメ!」
 家の周りはみな、花、花、花。お花が咲いていないところがない。
本当に大切なものは、自分のすぐそばにあることを、そっと気づかせてくれる。
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 文は韓国児童文学界の巨星、クォン・ジョンセン先生。絵はチョン・スンガクが描いた。ベストセラー絵本『こいぬのうんち』(第1回で紹介)の、あのコンビの作品で、『こいぬのうんち』がでた翌年の1997年に韓国で発売された。
 約20年前の作品だが、教科書に収録されるなど、今も多くの支持を得ている名作だ。 
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 わたしはアナグマおばさんがはいている、赤色の派手なモンペ(韓国語でモンペパジ)がとても気に入っている。よく見ると、動物の足跡のような模様が入っていて、なかなかおしゃれ!
 モンペが、韓国の田舎のアジュンマたちの定番ファッションということで、画家もアナグマおばさんにはかせたのだろう。

 ところが、昨今、このモンペが涼しくて機能的なことに着目。若者もはける柄が登場して大流行している。名前も、田舎臭い「モンペパジ」ではなく、まるで冷蔵庫(ネンジャンゴ)のなかのように涼しいということで、「ネンジャンゴパジ」という今風の呼び名で呼ばれているのだ。
 この夏、みなさんもネンジャンゴパジをはいてみてはいかが。

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by kimfang | 2015-05-01 17:24 | 連載
15/4/23 絵本の可能性 広がれ
韓国絵本紹介コラム15回目です。
絵本の可能性 広がれ
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 韓国の人たちは詩が大好きだ。たとえばソウルの地下鉄のホームにある安全扉。だれかが書いた詩がガラスに書かれていて、電車を待つ間に読むことができる。テレビでも、タレントや市民が自分のつくった詩を披露している場面をよく目にする。詩が、生活のなかに息づいているのだ。

 国民から愛されてきた童詩や童謡に絵をつけて、絵本にしてみるのはどうだろう? 韓国の老舗出版社チャンビは、絵本のさらなる可能性を広げようと画期的な企画を考えた。それが、「ウリ詩絵本」である。
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 シリーズの第1巻は『しろいは うさぎ』(第12回で紹介)。それから何と、11年もかかって2014年に第15巻の『こいぬとこやぎ』(日本語訳未刊)でようやく完結をみた。
 このシリーズには、韓国を代表する画家たちが多数参加したということもあって、日本で翻訳出版されたものが結構ある。今回は第3巻の『よじはん よじはん』(原題 넉점반)を紹介しよう。

 この詩を書いたのは、韓国を代表する童謡詩人、ユン・ソクチュン先生だ。13歳から詩を書きはじめ、約1300作を残し、半数以上が童謡となるなど作詞者として有名だ。
 また先生は、子どものことを「オリニ」と呼ぶことを普及させたパン・ジョンファン先生亡きあと、その遺志を引き継いで解放後の韓国児童文学の発展に大いに尽くされた方だった。

 さて、内容だ。まだふつうの家に時計がなかった時代。オンマが幼い娘に「今、何時か聞いてきて」と頼む。女の子は近くのお店にいって、
 「おじさん おじさん いま なんじ かあさんが きいてきてって」とたずね、
 店主は「よじはんだ」と答える。
 女の子はすぐに家に帰って、早くそれをオンマに伝えなくてはいけないのだが……。ニワトリ、アリ、トンボ、オシロイバナに出会ってしまう。道草をいっぱいして、日がとっぷりと暮れたころにようやく家にもどり、
 「かあさん かあさん いま よじはん だって」と知らせるのだ。
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 絵を描いたイ・ヨンギョンは、ユン・ソクチュン先生が詩を書いた時代よりも少し下げて、1960年代の田舎の風景を念頭に描いた。彼女がつくりだした主人公の女の子の、何とも愛らしいこと! 

 わたしは韓国のオリニ図書館で多くの講演を行っているが、写真のように壁や柱に描かれたこの主人公と出会うことがしばしばある。詩だけでなく、絵も高い支持を得ているのである。
 原書の画家プロフィールには、「絵本の主人公は先生とうりふたつです」と書いてある。
 これもまた、微笑ましい。

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by kimfang | 2015-04-23 19:21 | 連載
15/4/8 音楽とコラボする絵本
韓国絵本紹介コラム14回目です。

 今年韓国は、「ボローニャ・ラガッツィ賞」の全5部門で優秀賞を受賞した。わずか30年あまりで、よくぞここまできたなぁと感慨深いものがある。
 30年ほど前は欧米の翻訳ものばかり。しかも「全集」というセットものが主流。書店で自分が好きな絵本を一冊だけ買う、それすらむずかしいというありさまだった。
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 そんな韓国の絵本界に、小さいけれども確かな光を灯したのが、1988年にリュウ・チェスウがだした『山になった巨人―白頭山ものがたり』。韓国ではじめて出版された本格的な絵本ということで、「韓国絵本のはじまり」と呼ばれている。
 日本語版は1990年に福音館からでた。当時は日本で韓国の絵本が翻訳出版されることは珍しいことだったこともあって、韓国と日本でとても話題になった。

 リュウ・チェスウの名は、韓日でよく知られるようになっていったが、世界に広く知られるようになったのはやはり、今回紹介する絵本『きいろいかさ』(原題 노란우산 )がでてからだろう。
 この絵本は、雨の日に子どもが登校するまでのことを抽象的に描いた、まるで雨音が聞こえくるかのようなすてきな絵だ。しかしこの絵本には文章がない。その代わりに音楽がついている。文字のない絵本はそれまでもあったが、絵と音楽のコラボレーション絵本は新しい試みだった。
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 そんな新感覚の絵本は2002年、国際児童図書評議会(IBBY)の「優秀図書」に選定、ニューヨーク・タイムズによる「世界の優れた絵本10選」に選ばれるなど、世界的に高い評価を得たのだ。
 実はこの絵本、企画を思いついたのは、自身の作品『うさぎのおるすばん』で、翌年のニューヨーク・タイムズの「優れた絵本」に選ばれたイ・ホベクだった。企画から完成に至るまで、5年もかかったという。
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 そして音楽を担当したのは、前回紹介した『しろいは うさぎ』の子ども向けコンサートの音楽と演出を担当した、シン・ドンイル。シンは、ソウル大学を卒業後にアメリカのニューヨーク大学大学院に進み、帰国後は精力的に音楽活動を展開している。

 さて、絵と音楽がコラボしたこの絵本を、どのように「読む」か? 
 表紙カバーの裏には、「絵本を読んだあと、音楽をきいてみてください。また、ちがった世界がひろがることでしょう」とある。
 わたしのお気に入りは、雨の日に、音楽に合わせて、ゆっくりとひとページずつめくっていくという「読み方」。みなさんも、それぞれにお好きな「読み方」でたのしんでほしい。

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by kimfang | 2015-04-08 19:56 | 連載
15/3/25 済州島の歌 絵本で全国へ
韓国絵本紹介コラム13回目です。
済州島の歌 絵本で全国へ   

 前回に引き続き、クォン・ユンドクの作品を紹介する。今回は 『しろいは うさぎ』(原題 시리동동 거미동동)。済州島の人びとによって歌い継がれてきた言葉遊びの歌に感動した作者が、いくつかの歌をもとにつくりあげた。
 主人公の女の子は、海女のオンマが仕事からもどってくるのをひとりで待っている。溶岩でつくられた石垣のうえにクモがいるのを見つけると、
 ♪ シリドンドン コミドンドン ♪ と歌いだす。これは、クモが糸にゆらりとぶら下がっている様子を表現した済州島の方言だ。
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 「ゆらぁりゆらぁりは クモの巣だね
  クモの巣は 白い
  白いは ウサギ
  ウサギは 飛ぶよ
  飛ぶのは カラス
  カラスは 黒い」

 どんどん歌は続き、やがて終わりへと向かう。
 「海は 深い 
  深いは
  母さんの心だね」

 最後の言葉は、思わず胸がキュンとなってしまう。
 でも……。はじめて読んだときは、「アッパだって負けていないだけどなぁ」と思ってしまった。まったくアッパがでてこなかったからだ。
 しかし絵本を何度か読みかえすうちに、どこにも描かれていないはずなのに、どこかにアッパがいるように感じてきた。小さく描かれた土が丸く盛られたお墓や、黒い岩山のやさしい表情などから、女の子を見守っているアッパの存在を感じるのだ。
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 むかし済州島では、男が漁にでて命を落とし、女と子どもだけで暮らすことも多かったという。クォン・ユンドクは、原書に寄せたあとがき(日本語版にはない)で、つぎのように語った。
 「わたしはこの本を描きながら、悲しみを学んだ。(中略) だから、むしろ宝石のように美しく描きたかった。あまりにも悲しいのに、悲しくないように描く方法を学んだ。
 済州島には女神がたくさんいる。オンマが辛くて寂しい人生を地面のくぼみのなかに置き、人と自然を抱きかかえて笑っている。わたしはそのなかに大きな女神を見た」

 よきアッパ、愛する夫を亡くした悲しみをただ、悲しく伝えるなら誰でもできる。作者は悲しみを、まったく正反対であるぬくもりのある絵で描き切った。
 「深いは 母さんの心だね」という最後の言葉の裏にはきっと、ひとりで育ててくれているオンマへの強い感謝の気持ちがこめられているのだろう。

 この絵本は教科書に収録されただけでなく、お話と歌と踊りで構成された子ども向けコンサートにもなって各地で上演された。済州島に伝わってきた言葉遊びの歌は、全国の子どもたちが知る歌となったのだ。 

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by kimfang | 2015-03-25 19:40 | 連載
15/3/18 むかしながらの暮らしを体験
韓国絵本紹介コラム12回目です。
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 3月は一年のなかでも、もっとも引っ越しの多い月。今回紹介する絵本『マンヒのいえ (原題 만희네 집)は、狭いアパートで暮らしていたマンヒが、ハラボジ、ハルモニの家に引っ越すという話だ。
 韓国のむかしながらの暮らしが残る家がたいそう気に入ったマンヒが、広い家のなかをひとつひとつ読者に案内していくというつくりになっている。
 まずは奥座敷であるアンバン、台所、納屋、チャンドクテ、裏庭、前庭、玄関、マンヒ自身の部屋、お風呂、屋上、アッパの部屋も紹介するが、最後は眠ってしまう。

 では、マンヒに代わってわたしが、ひとつだけマンヒよりも詳しく説明してみよう。玄関を紹介したときにマンヒはつぎのように話す。
 「玄関のとびらの上に、頭が3つあるタカのお札を貼ってるでしょ。
『いいことがありますように』って、おばあちゃんが貼ったんだ」

 絵はかなり小さいが、それでもちゃんと「サムドゥメ」とわかるように描かれている。さまざまなタイプのものがあるが、写真のように3つの頭(サムドゥ)を待つ タカ(メ)が、トラの背中に乗っているものが、もっとも一般的だ。
 勇敢なタカが、災難をしっかりと狩ってくれる。そこに神聖なトラまでいるのだから、これで安心。
このようなお札のことを「三災符籍」という。 「三災」とは、水、火、風の災難のことで、「符籍」とはお札やお守りを意味する。
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 わたしがこの絵本で一番気に入っているのは、絵の一部だけが白黒になっているところ。はじめて読んだときはわからなかったが、何度も読みかえすうちに、絵の白黒の部分は「つぎのページで詳しく紹介する部屋ですよ」と、作者が事前に示してくれていたのだ。

 新聞のコラムでは写真が小さくてわかりづらいので書かなかったが、表紙が全体的に白黒なのにも、ちゃんとした理由があるのだ。よ~く見てほしい。門の内側の一部には色がついている。つまりは、これから、家、全体を紹介しますよ、という作者からのメッセージが込められていたのだ!

 絵本のなかには、むかしから韓国の家庭で使われてきた、少し古い家具や道具がいっぱい登場する。それらを通じて、むかしながらの韓国の暮らしを体験することがでる。

 この絵本は、韓国を代表する絵本作家のひとりであるクォン・ユンドクが、息子のマンヒに読ませるためにつくった、彼女のはじめての絵本だ。発売から20年が過ぎた今も、多くの子どもたちから支持されているロングセラー。フランスでも発売されている。

 貴重な写真を提供してくださった高麗美術館さま、この場を借りてお礼を申し上げます。

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by kimfang | 2015-03-18 18:53 | 連載
15/3/4 ポストにツバメのわけ
韓国絵本紹介コラム11回目です。
ポストにツバメのわけ

 3月3日、韓国では「サムジンナル」(陰暦)という節句。この日は、お餅にツツジの花を貼りつけて焼いた花煎を食べて、待ちわびた春の到来を祝う。そしてサムジンナルは、「江南 カンナム」にいっていたツバメがもどってくる日だ。
 ツバメといえば、韓国の郵便局は写真のようにツバメをモチーフにしたマークだ。その答えは、今回紹介する絵本、『ノルブとフンブ』(原題 흥부와 놀부)のなかにある。
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 むかしむかし、あるところにノルブとフンブという仲のいい兄弟がいた。ところがアボジが死ぬと、兄のノルブは弟のフンブを家から追いだし遺産を独り占めにした。
 ある日、弟のフンブの家に巣をかけたツバメのヒナがヘビに襲われる。フンブはケガをしたヒナを懸命に看病してやった。やがて巣だったツバメは江南へ飛んでいく。
 つぎの年の春。ツバメがフンブのところへもどってきて、お礼にとひょうたん(ふくべ)の種を落とした。
種をまくと、あら不思議。あっという間にどんどん育ち、大きな実をつけ。実を割ると、お金や宝石がたくさんでてきたのだ! 
 
 うわさを聞きつけた兄のノルブは、非情にもツバメのヒナにわざとケガをさせて放っておく。江南からもどったツバメは同じようにひょうたん(ふくべ)の種を落とすが、実を割ると泥やゴミ、おまけに鬼まででてきて家をメチャメチャに壊してしまった。
 住むところのなくなったノルブは、重い心をかかえながら弟の家を訪ねる。兄に家を追いだされたフンブだったが、ノルブをこころよく迎え入れ、それから兄弟はむかしのように仲よく暮らした。

 さて、このお話のなかで、ツバメは「幸運の種」を持ってきた。むかし話のツバメのように、よい報せを届けたいということから、韓国の郵便局のシンボルマークは、1983年からずうっとツバメのマークなのだ。
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 ところで、むかし話にでてくる「江南」とは、いったいどこなのだろうか?
 この場合の「江」は漢江ではなくて、中国の長江。長江より南の地という意味だが、南のどこなのか? だれも知らなかった。
 江南がどこなのか特定されたのは、1960年代のこと。64年に米軍の協力のもと、各種の鳥、6万羽にリングをつけてはなった。リングをつけられたツバメは、タイ、フィリピン、台湾、ベトナム、マレーシアで発見。ついに江南が、東南アジアの国ぐにだということがわかったのだ。

 しかし近年は、韓国へもどってくるツバメの数が激減。ソウルでは見ることすらむずかしい鳥になった。そこで、県をあげて40年以上もツバメの調査を行ってきた、石川県に学ぼうとしている。
 慶尚南道は2012年から石川県との間で「ツバメ交流」を開始。13年には韓日の子どもたちが一緒に、韓国のツバメを調査したのだ。

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by kimfang | 2015-03-04 20:41 | 連載