動物児童文学作家のキム・ファンです!!
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童話作家のこぼれ話 (2)
「コウノトリの悲劇」(改訂版)

f0004331_1217591.gif 内親王誕生で、コウノトリがにわかに「売れっ子」になった。コウノトリを愛する者のひとりとして大変嬉しく思っているが、国の特別天然記念物にもかかわらず、相変らずこの鳥に多くの「悲劇」が付きまとっている現実にふれるたび、心が重くなる。
 「悲劇」のひとつ目は、ヨーロッパの「コウノトリ」シュバシコウと間違えられていることだ。このシュバシコウこそが、「赤ちゃんを運んでくる鳥」で、コウノトリには、「赤ちゃんを運んでくる」といういい伝えはない。くちばしの赤いシュバシコウのいい伝えをそのまま「輸入」したので、このようなことになってしまったのであろうが、コウノトリはくちばしが黒く、シュバシコウとは明らかに違うのだ。まぁ、シュバシコウと間違えるのなら、まだマシで、赤ちゃんを運ぶイメージから、ペリカンと間違えている人がいるのが現実だ。
 「悲劇」のふたつ目は、「ツル」と間違えられてきたことだ。コウノトリは大木の上に巣を作るのだが、ツル(タンチョウ)は、木の上には重くてとまれず、巣も地上の湿地に作る。日本では古来、松とツルが「おめでたいもの」とされてきたので、松にとまるコウノトリは、いつの間にか「おめでたい」ツルと混同されてしまった。あげくの果てには、「ツルの恩返し」という昔話でも、ツルと取り違えられてしまった。渡りをせず、人里で古くから日本人と暮らしてきたコウノトリに対して、ツルは渡りをし、しかも人が踏み入れることのない湿地で暮らしてきたのだ。だから本当は昔話も、人とともに暮らしたコウノトリが恩返しをする、「コウノトリの恩返し」とならなければいけなかったのである。
 しかし、何といっても最大の「悲劇」は、一九七一年にコウノトリが絶滅し、この日本で、その姿を見ることができなくなったことだろう。肉食のコウノトリは、農薬に汚染されたフナやドジョウを食べたせいで繁殖力が弱くなり、絶滅したのだ。
 ところが今、一度絶滅したコウノトリを外国から譲り受け増やし、もう一度野性に返そうという試みが兵庫県豊岡市の「コウノトリ保護増殖センター」で行われている。センターでは約四十年をかけて七十羽にまで増やした。日本各地の施設で増えたコウノトリは、今では百二十羽にのぼる。数年後には、「放鳥」できる段階に入るが、農薬に汚染されていないエサが豊富にある環境を作ってやらなければ、また、絶滅してしまうことだろう。そんな話をすると、今度はトキと間違えられるというのが、おまけの「悲劇」だ。
 日本のどこにでもいたコウノトリ。国の特別天然記念物のコウノトリ。日本人がコウノトリのことをまったく知らないことが、本当の「悲劇」なのかもしれない。
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by kimfang | 2001-11-16 00:02