動物児童文学作家のキム・ファンです!!
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12/6/17 原発予定地のカンムリウミスズメを撮った!
 16日に上関を訪れた。絵本、『のんたとスナメリの海』の取材のために訪れて以来、11年ぶりだ。
 上関原発は本格的な埋め立て工事がはじまったが、福島の原発事故を受け工事が中断。しかし計画が白紙撤回されたわけではない。
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 今回は、イルカの仲間であるスナメリを題材としたノンフィクションを書くべく、「長島の自然を守る会」が企画した「スナメリウォッチング&祝島ビワがり」に参加した。
 取材に向かう5日前に広島湾で100頭ものスナメリが確認されたと、地元の新聞が大きく報じた。スナメリに会える確率は高いぞ! 期待で胸を膨らませた。

 そところが雨がひどい。ぼくは小さい方の船に乗り、カメラを構えて甲板に座った。
 ガイドがいった。「ここにいたスナメリたちが、イワシの群れを追って広島湾に移動しました」。
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 しかしスナメリを見つけることはできず、船は原発予定地に着いた。
 11年前は工事もはじまっていなくて、生きもの調査もすることもできた。しかし今は、船の上から、埋め立てられるかもしれない田ノ浦の浜を眺めるしか術がない。
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 と、その時、船長が「いた!」と叫んだ。
 ガイドも「キムさん、カメラ、カメラ!」と続けた。
 ついにスナメリに会える! 

 大きく揺れる船を這うようにして声のする方へ。

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 ところがいたのはスナメリでなく、カンムリウミスズメだった。大きく揺れる船に這いつくばって無心にシャッターを切った。

 世界でたった5,000羽しかいない希少な海鳥だ。2008年にこの海域で初めて発見されて以来、何度も撮られているが、原発予定地での撮影は珍しく、貴重な写真となった。

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 祝島に着くと、大きい方の船に乗っていた人たちから声をかけられた。
「カンムリウミスズメを見たんですって! 会ってもらいたい人のところに、現れるのねえ」
「スナメリよりも会えない生きものだよ。よかったね!」
 確かにそうだが、やはりスナメリに会えていないことが心に引っ掛かった。
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 予定された行事をすべて終えて、船は祝島を離れた。
 スナメリに会うにはこれが最後のチャンス。海の荒れは益々ひどく、もはやカメラを構えられる状態ではない。それでも海を見つめ続けた。

 するとどうだ! 最後の最後に、息継ぎのために海面に現れたスナメリ、2頭を見つけた! 

今回の旅で、原発予定地は、瀬戸内海の原風景が残った「奇跡の海」であると、改めて感じた。
決して壊してはいけない。
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by kimfang | 2012-06-25 22:20 | 取材ノート
12/6/13 イルカと海軍基地
 「チェドリ」――。
 韓国でその名を知らない人がいないほど、超有名なイルカの名前だ。
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 韓国で動物の名前をつけるときの定番といえば、うしろに「ド(ト)リ」をつけること。ソウルオリンピックのときのマスコット、「ホドリ」を覚えているだろうか? 韓国語でトラを意味する「ホランイ」に「ドリ」をつけてホドリ。さて、イルカのチェドリは、いったい何にドリをつけたのだろうか? それが彼を一躍有名「人」にした、最大の理由だ。答えを話そう。チェドリの「チェ」は、チェジュ(済州)島のチェなのである。
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 ソウル大公園(韓国最大の動物園)のイルカショーで活躍していた、13歳のオスのイルカ、チェドリが新聞やテレビに連日登場するきっかけとなったのは、彼が2年前にチェジュ島の海で違法に捕獲されたミナミハンドウイルカだったことがわかったからだ。

 このイルカは韓国ではたった114頭といわれるほど希少で、保護の対象になっていた。なのに、そのイルカが捕まえられて、しかもショーをさせられていたというショッキングな事件だった。ソウル大公園を運営するソウル市のパク・ウォンスン市長は、「チェドリに野生化訓練をし、故郷の海にかえす」と記者発表した。それで一気に注目を浴びたのだった。                                  右は市長のツイッター →

 それだけでない。勢いよく飛び跳ねたチェドリは、「海軍基地の是非」という、くす玉を見事に割って見せたのだ。
 韓国政府は、チェジュ島に新しい海軍基地建設を予定している。基地建設に反対する人たちは、これまでも我慢強く闘ってきたが、「中国の脅威に備えるためにも必要だ」という論理が次第に支持を集めるなか、国民的な反対運動へとは至らなかった。

 チェジュ島の南に位置するイオ島は、現在は韓国が実効支配しているが、最近になって中国が領有権を主張し、両国の外交問題にまで発展している。これをいいことに基地建設が粛々と強行されようとしていた、まさにそんなときに、チェドリが大きくジャンプしたのだ!

「せっかく海に帰しても、チェジュの海に大規模な基地が建設されれば、チェドリは生きていけないんじゃないか?」
「基地のためだというが、チェジュの大切な自然を壊してもいいのか!」
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 基地建設問題にあまり関心のなかった人までもが、無意味な自然破壊をやめさせようと立ち上がりはじめた。それもそのはず、基地建設の一環として、「クロンビ」と呼ばれる巨大な岩が爆破されることが知れ渡ったからだ。長い歴史を刻んだこの岩は、チェジュ島の自然そのものだ。

 チュジュ島の海軍基地建設問題は、12月の大統領選挙の大きな論点になろう。

 ところで、チェドリの余波なのか、にわかにスナメリが注目を浴びてきた。
 韓国KBSでも、「スナメリって知ってますか?」というニュースを流した。過去にスナメリの本を出しているぼくとしては、「ようやく来たか…」という感じだ。

 スナメリの本を、また、書かねば! 
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by kimfang | 2012-06-20 10:31 | トピックス
12/6/12  「水俣の赤い海」
 水俣病研究や患者の支援に尽くした熊本県の医師、原田正純さんが11日に急性骨髄性白血病で亡くなられた。
 原田さんは、水俣病におかされながらも自らのうけた障害をのりこえて精一杯生き続けようとする若者郡を描いたドキュメンタリー、『水俣の赤い海』(初版 / 1986 / フレーベル館)の著者でもある。

 長く軍政が続き、1987年の「民主化宣言」の頃からようやく民主化が動きはじめた韓国では、さまざまな理由からノンフクション児童文学が発展しなかった。その発展に大きく寄与したのが、1999年に韓国で出た韓国語版『미나마타의 붉은 바다』(ウリ教育)だ。
 その後、この本は韓国の小学生の必読書となり、韓国でノンフィクション児童文学といえば、『미나마타의 붉은 바다 水俣の赤い海』といわれるほどになった。
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 ぼくにとってもこの本は大きな存在だ。2004年、『水俣の赤い海』を韓国版をプロデュースした人と出会い、「在日としてどう生きてきたかを、コウノトリと絡めて書いてほしい」と依頼を受ける。そうして出た本が、韓国で初の本となった『황새 コウノトリ』(2007 / ウリ教育)だ。
 もちろん、スタッフは、『水俣の赤い海』の韓国版を作った人たちだった。

 恥ずかしながら2004年に原稿の依頼を受けるまでは、ぼくは『水俣の赤い海』のことを知らなかった。1986年に初版の本だからということもあり、また、ノンフクションでやっていくという覚悟も、まだなかった頃だから仕方ないといえばそうなのだが、韓国の人たちに指摘されてようやく読んだことを今でも鮮明に記憶している。

 2006年は水俣病公式確認50年の記念すべき年だった。
 おそらく、韓国での反響の大きさもあったのだろう。『水俣の赤い海』の復刻版が発売された。

 韓国の友人からよくたずねられる。
 『水俣の赤い海』の子どもたちは、その後、どうなったの?と―。

 原田先生には、ぜひ、続編を書いていただきたかった。
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by kimfang | 2012-06-17 10:44 | トピックス