動物児童文学作家のキム・ファンです!!
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15/3/25 済州島の歌 絵本で全国へ
韓国絵本紹介コラム13回目です。
済州島の歌 絵本で全国へ   

 前回に引き続き、クォン・ユンドクの作品を紹介する。今回は 『しろいは うさぎ』(原題 시리동동 거미동동)。済州島の人びとによって歌い継がれてきた言葉遊びの歌に感動した作者が、いくつかの歌をもとにつくりあげた。
 主人公の女の子は、海女のオンマが仕事からもどってくるのをひとりで待っている。溶岩でつくられた石垣のうえにクモがいるのを見つけると、
 ♪ シリドンドン コミドンドン ♪ と歌いだす。これは、クモが糸にゆらりとぶら下がっている様子を表現した済州島の方言だ。
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 「ゆらぁりゆらぁりは クモの巣だね
  クモの巣は 白い
  白いは ウサギ
  ウサギは 飛ぶよ
  飛ぶのは カラス
  カラスは 黒い」

 どんどん歌は続き、やがて終わりへと向かう。
 「海は 深い 
  深いは
  母さんの心だね」

 最後の言葉は、思わず胸がキュンとなってしまう。
 でも……。はじめて読んだときは、「アッパだって負けていないだけどなぁ」と思ってしまった。まったくアッパがでてこなかったからだ。
 しかし絵本を何度か読みかえすうちに、どこにも描かれていないはずなのに、どこかにアッパがいるように感じてきた。小さく描かれた土が丸く盛られたお墓や、黒い岩山のやさしい表情などから、女の子を見守っているアッパの存在を感じるのだ。
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 むかし済州島では、男が漁にでて命を落とし、女と子どもだけで暮らすことも多かったという。クォン・ユンドクは、原書に寄せたあとがき(日本語版にはない)で、つぎのように語った。
 「わたしはこの本を描きながら、悲しみを学んだ。(中略) だから、むしろ宝石のように美しく描きたかった。あまりにも悲しいのに、悲しくないように描く方法を学んだ。
 済州島には女神がたくさんいる。オンマが辛くて寂しい人生を地面のくぼみのなかに置き、人と自然を抱きかかえて笑っている。わたしはそのなかに大きな女神を見た」

 よきアッパ、愛する夫を亡くした悲しみをただ、悲しく伝えるなら誰でもできる。作者は悲しみを、まったく正反対であるぬくもりのある絵で描き切った。
 「深いは 母さんの心だね」という最後の言葉の裏にはきっと、ひとりで育ててくれているオンマへの強い感謝の気持ちがこめられているのだろう。

 この絵本は教科書に収録されただけでなく、お話と歌と踊りで構成された子ども向けコンサートにもなって各地で上演された。済州島に伝わってきた言葉遊びの歌は、全国の子どもたちが知る歌となったのだ。 

 記事全文は、ここから読めます。
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by kimfang | 2015-03-25 19:40 | 連載
15/3/18 むかしながらの暮らしを体験
韓国絵本紹介コラム12回目です。
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 3月は一年のなかでも、もっとも引っ越しの多い月。今回紹介する絵本『マンヒのいえ (原題 만희네 집)は、狭いアパートで暮らしていたマンヒが、ハラボジ、ハルモニの家に引っ越すという話だ。
 韓国のむかしながらの暮らしが残る家がたいそう気に入ったマンヒが、広い家のなかをひとつひとつ読者に案内していくというつくりになっている。
 まずは奥座敷であるアンバン、台所、納屋、チャンドクテ、裏庭、前庭、玄関、マンヒ自身の部屋、お風呂、屋上、アッパの部屋も紹介するが、最後は眠ってしまう。

 では、マンヒに代わってわたしが、ひとつだけマンヒよりも詳しく説明してみよう。玄関を紹介したときにマンヒはつぎのように話す。
 「玄関のとびらの上に、頭が3つあるタカのお札を貼ってるでしょ。
『いいことがありますように』って、おばあちゃんが貼ったんだ」

 絵はかなり小さいが、それでもちゃんと「サムドゥメ」とわかるように描かれている。さまざまなタイプのものがあるが、写真のように3つの頭(サムドゥ)を待つ タカ(メ)が、トラの背中に乗っているものが、もっとも一般的だ。
 勇敢なタカが、災難をしっかりと狩ってくれる。そこに神聖なトラまでいるのだから、これで安心。
このようなお札のことを「三災符籍」という。 「三災」とは、水、火、風の災難のことで、「符籍」とはお札やお守りを意味する。
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 わたしがこの絵本で一番気に入っているのは、絵の一部だけが白黒になっているところ。はじめて読んだときはわからなかったが、何度も読みかえすうちに、絵の白黒の部分は「つぎのページで詳しく紹介する部屋ですよ」と、作者が事前に示してくれていたのだ。

 新聞のコラムでは写真が小さくてわかりづらいので書かなかったが、表紙が全体的に白黒なのにも、ちゃんとした理由があるのだ。よ~く見てほしい。門の内側の一部には色がついている。つまりは、これから、家、全体を紹介しますよ、という作者からのメッセージが込められていたのだ!

 絵本のなかには、むかしから韓国の家庭で使われてきた、少し古い家具や道具がいっぱい登場する。それらを通じて、むかしながらの韓国の暮らしを体験することがでる。

 この絵本は、韓国を代表する絵本作家のひとりであるクォン・ユンドクが、息子のマンヒに読ませるためにつくった、彼女のはじめての絵本だ。発売から20年が過ぎた今も、多くの子どもたちから支持されているロングセラー。フランスでも発売されている。

 貴重な写真を提供してくださった高麗美術館さま、この場を借りてお礼を申し上げます。

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by kimfang | 2015-03-18 18:53 | 連載
15/3/4 ポストにツバメのわけ
韓国絵本紹介コラム11回目です。
ポストにツバメのわけ

 3月3日、韓国では「サムジンナル」(陰暦)という節句。この日は、お餅にツツジの花を貼りつけて焼いた花煎を食べて、待ちわびた春の到来を祝う。そしてサムジンナルは、「江南 カンナム」にいっていたツバメがもどってくる日だ。
 ツバメといえば、韓国の郵便局は写真のようにツバメをモチーフにしたマークだ。その答えは、今回紹介する絵本、『ノルブとフンブ』(原題 흥부와 놀부)のなかにある。
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 むかしむかし、あるところにノルブとフンブという仲のいい兄弟がいた。ところがアボジが死ぬと、兄のノルブは弟のフンブを家から追いだし遺産を独り占めにした。
 ある日、弟のフンブの家に巣をかけたツバメのヒナがヘビに襲われる。フンブはケガをしたヒナを懸命に看病してやった。やがて巣だったツバメは江南へ飛んでいく。
 つぎの年の春。ツバメがフンブのところへもどってきて、お礼にとひょうたん(ふくべ)の種を落とした。
種をまくと、あら不思議。あっという間にどんどん育ち、大きな実をつけ。実を割ると、お金や宝石がたくさんでてきたのだ! 
 
 うわさを聞きつけた兄のノルブは、非情にもツバメのヒナにわざとケガをさせて放っておく。江南からもどったツバメは同じようにひょうたん(ふくべ)の種を落とすが、実を割ると泥やゴミ、おまけに鬼まででてきて家をメチャメチャに壊してしまった。
 住むところのなくなったノルブは、重い心をかかえながら弟の家を訪ねる。兄に家を追いだされたフンブだったが、ノルブをこころよく迎え入れ、それから兄弟はむかしのように仲よく暮らした。

 さて、このお話のなかで、ツバメは「幸運の種」を持ってきた。むかし話のツバメのように、よい報せを届けたいということから、韓国の郵便局のシンボルマークは、1983年からずうっとツバメのマークなのだ。
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 ところで、むかし話にでてくる「江南」とは、いったいどこなのだろうか?
 この場合の「江」は漢江ではなくて、中国の長江。長江より南の地という意味だが、南のどこなのか? だれも知らなかった。
 江南がどこなのか特定されたのは、1960年代のこと。64年に米軍の協力のもと、各種の鳥、6万羽にリングをつけてはなった。リングをつけられたツバメは、タイ、フィリピン、台湾、ベトナム、マレーシアで発見。ついに江南が、東南アジアの国ぐにだということがわかったのだ。

 しかし近年は、韓国へもどってくるツバメの数が激減。ソウルでは見ることすらむずかしい鳥になった。そこで、県をあげて40年以上もツバメの調査を行ってきた、石川県に学ぼうとしている。
 慶尚南道は2012年から石川県との間で「ツバメ交流」を開始。13年には韓日の子どもたちが一緒に、韓国のツバメを調査したのだ。

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by kimfang | 2015-03-04 20:41 | 連載