野菜嫌いだ。鍋にハクサイなどが入っていても、絶対に自分からは食べない。それをよく知っている家人が無理やりに皿に入れる。そんなぼくが柄にもなく野菜の絵本を書くことになった。
「新人の画家のために、身近な植物の話を書いてくれないかしら」 お世話になっている友人のフリー編集者の、たっての頼みだから断れない。 植物ねぇ…韓国の子どもたちに身近な植物なぁ…おおっ、あれしかないわ! 韓国といえばキムチ! キムチといえばハクサイ! 素材はハクサイに決めた。友人のリクエストは「画家の精密画が際立つよう、成長過程の物語にしてね」。 ちょうど都合よく近所の畑でハクサイが栽培された。3-4日に一度は畑を訪れて携帯カメラでパチリ。成長過程をつぶさに観察していた。 外葉が出て大きくなると、葉が立ち出す。そして次々と葉が巻いていく。まったくもって不思議だ。そういえばキャベツも葉を巻いている。何で? 調べてみると何とキャベツも、葉が巻かないケール(青汁の原料)を改良して人間が創りだしたものだった。ハクサイも葉を巻かないパクチョイとカブが中国の揚州あたりで自然交雑。その後、人がより多くの葉を巻くものを選んで創りだした野菜だと知る。 しかも日本に伝わったのが明治時代で、広がったのは大正時代に入ってから。日清・日露戦争で大陸に浸出した兵隊が、中国からタネを持ち帰ったという逸話もある。案外と新しい野菜だったんだなぁ。 ところが日本でハクサイを育てると葉がちゃんと巻かない。ちゃんと葉の巻く「結球ハクサイ」ができるまでにはたいへんな苦労があったのだ。 そのことを分かり易く解説してくれるのが、←この本。お勧めです。 さてさて、ではでは、朝鮮半島へはいつ伝わったのか? 現在のような※キムチには結球ハクサイが不可欠。 だって、葉の間あいだにヤンニョム(薬味)をこすりつけなくては美味いキムチはできないんだもの。 (※トウガラシもヤンニョムも入っていないキムチは三国時代以前からある) ところが、これがよくわからない。朝鮮王朝中期以後という説もあり、日本で栽培に成功したものが朝鮮へと渡ったという説まである。 ←ポサムキムチ。↑ 韓国の伝統野菜である、半結球ハクサイ。 完全に葉が巻かない「半結結球ハクサイ」はすでに半島にあって、高麗の王宮ではケソン(開城)ハクサイという品種を使った宮廷キムチ―ポサムキムチが作られていた。(当時はまだ唐辛子は伝来していない。写真は現在風のポサムキムチ) そんなこんな、ハクサイの改良やらキムチの歴史が面白くて楽しくて、すらすらと原稿は出来上がった。自分でも結構いい出来だと思っていた。 しかし…友人からはOKが出なかった。 キムチのことならこの絵本→ 「ハクサイの歴史を描いたお話は面白いんだけどねぇ…完全な成長過程の物語じゃないから…」 結局、『ハクサイ』原稿は「塩漬け」となってしまった。とほほ。 塩漬けしてもしてもいつかは腐る。そうなる前に、「キムチ(絵本)」にしてやぁ~ で、原稿を書き上げてからは、ハクサイを積極的に食べている。 より多くの葉が巻くように努力したら先人たちのを思うと、食べずにはいられない。
by kimfang
| 2009-10-30 21:55
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