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動物児童文学作家のキム・ファンです!!
16/6/24 雲入りパンで空を飛ぶ
韓国絵本紹介コラム20回目です。
雲入りパンで空を飛ぶ   
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 外にでるのもおっくうになりがちなうっとうしい梅雨。でも、雨降りも悪いことばかりじゃないなぁと思ってしまう、『ふわふわ くもパン』(原題 구름빵)を紹介しよう。

 ある朝、目覚めると雨が降っていた。子ネコの兄弟がレインコートを着て外にでてみると、小さな雲が木の枝にひっかかっているではないか。兄弟は雲を壊さないように、そうっと抱えてオンマに持っていく。朝食の準備をしていたオンマは、雲を入れたパンを焼いた。

 オンマがオーブンを開けると、あら不思議、パンがふわりふわり。子ネコの兄弟がパンを食べると、子ネコたちもふわりふわり。
 「そうだ! くもパンを持っていってあげようよ」
 兄弟は空を飛んで、朝ごはんを食べずに会社にいってしまったアッパを探す。アッパは、ぎゅうぎゅうづめのバスに乗っていた。アッパもくもパンを食べると……。

 この絵本の魅力は、雲が入ったパンを食べて空を飛ぶというユニークな発想にある。でも、それを表現した「絵」がまた、何ともすばらしい。
 絵本の作者、ペク・ヒナはカリフォルニア芸術大学でキャラクターアニメーションを学んだ。アメリカで得た知識と経験を活かして、独特の立体技法をつくりだした。
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 たとえば登場人物であるネコたちは、色鉛筆で描いた絵を切り取った顔に、本物の布を使った服を着せている。まるで人形のように立体的に見えるのだが、実際はただの薄い紙。それを背景となる小さなセツトのなかにうまく配置し、写真に撮った。

 写真絵本というのは、どうしても絵で描かれた絵本と比べて、何か冷たい感じがしてしまうものだ。しかしこの絵本の写真は、そのような感じがまったくしない。その秘密はおそらく、キャラクターを紙で作ったところにあるのだろう。紙が持つあたたかみが活きているのだ。

 ペク・ヒナはこの絵本の原画で、2005年の「ボローニャ国際絵本原画展」において、今年のイラストレターに選ばれた。2004年の発売以来、今も売れ続けている大ベストセラーだ。テレビアニメやミュージカルになっただけでなく、多様なキャラクター商品がたくさん発売されている。
 いわば韓国人ならだれもが知っている「国民的童話」なのだ。

 ところがその人気は国内だけに留まらなかった。絵本はフランス、ドイツ、中国、ノルウェーなど、世界の8カ国でも発売された。さらにKBSが制作したテレビアニメは、ヨーロッパや中東など、世界の16か国で放映されたのだ。
 
 ネコの兄弟は、雨が降っていても外にでて雲を見つけた。たとえ雨降りでも、外にでると、何かいいことが起こるかもしれない。

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by kimfang | 2015-06-24 19:32 | 連載