昨年8月にでた紙芝居『カヤネズミのおかあさん』(童心社)が、「第54回五山賞」を受賞した。この賞は教育紙芝居の生みの親、高橋五山の業績を顕彰して設けられた紙芝居唯一の賞で、半世紀を超える長い歴史を持つ権威ある賞だ。その年度に出版されたすべての紙芝居のなかから選ばれた最優秀作品に授与される。
ぼくは紙芝居講座などで講師を務めたときは必ず五山賞について話し、「いつかはぼくも……」といってきたが、本当にいただけるとは思ってもいなかった。何よりも素晴らしい絵を描いてくださった福田岩緒先生と、粘り強く脚本にアドバイスをくださった童心社の編集者、そして、カヤネズミの生態について親切に教えてくださったカヤネズミ研究者のみなさんに感謝を伝えたい。
ぼくがまだ受賞は無理だと思っていたのは、いまだに紙芝居の脚本を絵本のように書いてしまうからだ。紙芝居はただ絵本をバラバラにしたものではない。紙芝居と絵本では、根本的なつくり方がちがうのだ。
いくつかあるが、特徴的なのは『ぬき』だろう。さっとぬいたり、とちゅうでとめたりすることで、「絵が動く」。
受賞を知らせる通知書には、
「物語の進行を盛り上げる工夫が凝らされたダイナミックな視点移動を含む変化に富む画面構成と、丁寧な筆遣いで描きこまれた登場動物の存在感にほぼ満点の高い評価が集まった」とあった。
つまり、「絵が動く『ぬき』がうまくできていますよ」と評価してもらったととらえている。
今回の受賞は今後のさらなる高みへの励みとしたい。
この紙芝居が、カヤネズミのことをもっと知ってもらえるきっかけになればいいな!
童心社ホームページ