2008年、読売新聞社さんからの仕事で、南北の軍事境界線であるDMZに記者さんを案内する仕事をいただいた。もちろん、コーディネートと通訳を兼ねている。
知人からこのDMZのすぐそばに、「野生動物病院」があり、スタッフたちがボランティアで野生動物を救っているという話を聞いた。ならば、そこも訪ねてみようとコースに入れた。
いって、すごいショックを受けた!
病院にはつぎからつぎへと傷ついた野生動物がひっきりなしに運びこまれてくる。
その、ほとんどが交通事故であり、DMZ付近だけではなく遠く南の地方からもどんどん段ボールに入れられて送られてくるのだ。
そんななかにヤマネコがいた。母親が交通事故で死んで残された子ネコ。カルテを読むと、保護されたときにはもう1頭兄弟がいたという。母親が交通事故に会わなければ、その子も死ぬことはなかったろうに。
不安そうにこちらを見ていた姿が今も忘れられない。
新聞社がインタビューしたこの病院の獣医師は、ソウル大学で学生を教えるキム・ヨンジュン博士だった。週末にここにきては、ボランティアで手術をするという。
ぼくは個人的にネコエイズのヤマネコへの感染についてたずねてみた。
「それはわかっているが、まだそれを国民が理解できるレベルにはない。それよりも、今、あなたがこうやって目にしている交通事故、ロードキルの惨状についてもっと国民に訴えるべきだ」
と指摘された。
そのとおりだ! このアプローチだ! 大きなヒントを得た。
しかしのちに、彼の妻と一緒に仕事をすることになるなど、そのときはまだ知らなかった。つづく。